耳鼻咽喉科領域における瞳孔径測定の意義

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タイトル別名
  • ジビ インコウカ リョウイキ ニ オケル ドウコウケイ ソクテイ ノ イギ
  • [Significance of pupillometry in otorhinolaryngology].

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抄録

耳鼻咽喉科領域において,瞳孔径の測定は幼児の聴力検査に聴性瞳孔反射が利用され,またメニエール病などの際に頭頸部自律神経支配の左右差をみるために瞳孔径左右差の観察がなされたほかにはほとんど検討されていない.<br>著者は赤外線テレビ装置を使用し,一眼または両眼を同時に観察し得る瞳孔観察装置を開発し,各種疾患における瞳孔径の観察および各種の実験的刺激に対する瞳孔反射を観察し,耳鼻咽喉科領域における瞳孔径測定の意義を再検討する目的で本研究を行なつた.<br>本研究は次の4つの項目について行った.<br>(研究1)実験的局所刺激による瞳孔径左右差変動の観察:鼓室,鼻中隔および軟口蓋粘膜の一側にキシロカインを塗布,または注射などの操作を加えた際の瞳孔径の変動を左右同時に観察した結果,一側鼓室,鼻中隔および軟口蓋粘膜への操作によりいつれも高率に人工的に瞳孔径左右不同症を発現させることができた.<br>(研究2)メニエール症候群における瞳孔径左右不同症の観察:メニエール症候群および対照として健康成人について,無操作時,いきこらえ,冷刺激および点眼などの操作を加えた際の瞳孔径の変動を左右同時に観察し比較した.その結果メニエール症候群では正常者群に比して瞳孔径左右差発現率が高く,とくに冷刺激,点眼などの操作を加えると推計学的にも有意の差がみられた.<br>(研究3)回転刺激による瞳孔反射の観察:電動式回転椅子を用い,クプロメトリー方式による回転刺激を与え回転中および停止後の瞳孔径の変動を健康成人および家兎について観察した.また家兎には両側頸部交感神経切断,両側内耳破壊,アトロピン点眼などの操作を加えた際の瞳孔反射をも観察した.その結果,ヒトにおける回転停止後の瞳孔反射には散瞳型,縮瞳型,瞳孔動揺型の三つの反応バターンがみられ,散瞳型が最も多かつた.<br>回転停止後散瞳を呈した家兎に両側頸部交感神経を切断すると,停止後縮瞳がみられ,また両側内耳を破壊すると停止後は何の変動もみられなかつた.停止後無反応とみとめられた正常家兎にアトロピンを点眼すると停止後散瞳がみられた.<br>(研究4)嗅刺激による瞳孔反射の観察:嗅覚障害を訴えない健康成人に blast injection 法で酢酸アミルによる嗅刺激を与えた際の瞳孔反射を観察し,ついで同一被検者について音刺激(拍子木一回叩打)による瞳孔反射を観察し比較した.その結果,瞳孔反射には散瞳型,瞳孔動揺型,無反応型の三つの反応パターンがみられ,音刺激の場合と同様散瞳を呈したものが最も多く他は少数例であった.以上より耳鼻咽喉科領域においても瞳孔径の測定によつて(1)病巣の局在,進展範囲,病態の解析,(2)メニエール病の素因調査,鑑別診断,予後の判定,(3)聴覚,嗅覚,平衡機能検査への応用などに意義のある資料をうることがでぎる場合がしばしばあるものと考えた.

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