ラセン隆起部の微細構造と同部位におけるK.M.の影響

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タイトル別名
  • ラセン リュウキブ ノ ビサイ コウゾウ ト ドウ ブイ ニ オケル K.M. ノ エイキョウ
  • [Ultrastructure of the spiral prominence and the effect of kanamycin].

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抄録

(目的)<br>蝸牛管側壁のラセン隆起部とその周囲の正常微細構造の観察と聴器毒として知られているKMの投与後,同部位での形態学的変化の有無についての観察が今回の研究目的である.<br>(実験法)<br>正常モルモット(300~400g)を20匹使用した.<br>(1) 内15匹にはKM400mg/kg•dayを20日間連日筋注投与した.<br>(2) 内5匹は蝸牛管側壁の正常復細構造観察のために用いた.<br>(1),(2)共に断頭後,速やかに側頭骨より両耳を原り出し,2%グルタルアルデヒド及び1%Os•O4にて固定し,次いで70%,80%,90%,95%,無水アルコールの順にて逐次脱水し,エポキシ樹脂内に包埋した.Ultramicrotomeにて超薄し,蝸牛管側壁のラセン隆起部及びその周囲を光顕及び電顕にて観察した.<br>(結果)<br>(1) ラセン隆起部及び外腔細胞層とその周囲の形態学的所見からは内リンバ吸収能が同部位に存在するとは考え難い.<br>(2) Stroma cells及びRoot cellsはラセン隆起内毛細血管(vas Prominence: V.P.)と形態学的には非常に近接なる位置にある.<br>(3) Stroma cellsはfibroblastに形態学的に非常に似た形態を示し,更にKM投与により,V.P.近在部から胞体の膨化,萎縮,消失等各像を呈した.従って,ラセン隆起部はV.P.を中心に細胞のないSpaceが拡大している像が認められた.これはStroma cellsのKM感受性が高いことの他に,V.P.のKM透過性の亢進も否定できぬ.<br>(4) ラセン隆起部上皮細胞,及び外腔細胞とRoot cellsではKMにより著明なる形態学的異常所見を示されなかつた.<br>(5) KM投与例でV.P.の内皮細胞の一部に血管腔面に向かう明らかな胞体膨隆を観察し,この意義について考察した.<br>(6) これらのKMによる変化は蝸牛下方回転にのみ観察され,上方回転には観察されなかつた.

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