ヒト精巣上体精子の妊孕能に関する研究

  • 松橋 求
    東邦大学医学部泌尿器科学第一講座

書誌事項

タイトル別名
  • STUDY ON THE FERTILITY OF EPIDIDYMAL SPERMS

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抄録

精路閉塞のうちで吻合不可能な症例や, 精管欠損の治療には精巣上体に人工精液瘤を造設する方法がある. 著者らは本法にて精子を回収し, 人工授精を行い35例中2例に妊娠をみたが低率であったため回収した精子が, どのような妊孕能を有するかを検討した. 妊孕能の判定法には hypoosmotic swelling (HOS) test, 共焦点レーザー走査顕微鏡観察とフローサイトメトリー法, ハムスターテストを行った. HOS test の膨化率は15.0~83.3%, 平均47.6±16.1%で正常群や閉塞症例を除く男性不妊症群に比し有意の差をもって低下していた. 共焦点レーザー走査顕微鏡では生存・死滅精子や, 生存あるいは死滅した生体反応完了精子の状態を, PIとFITC・PSA染色や, PIとFITC・Con A染色で示した. またフローサイメトリーでの百分率による各エリアの精子分布により妊孕能が判定できた. このうち, 以前に本法にて妊娠した症例では妊孕能のあるエリアに精子分布が多く, また妊娠不成功例では妊孕能のないエリアに精子分布がみられ, 妊孕能の判定に有用な方法であった. ハムスターテストでは受精率は0~25%, 平均8.2±10.0%と正常群とは有意の差をもって低下がみられたが不妊症群とは有意差はなかった. 以上より本法にて回収した精巣上体精子の妊孕能は低く, 人工精液瘤の材質の改善や回収方法の改良を検討する必要がある. またフローサイトメトリーの応用により選択的に妊孕能の高い精巣上体精子の回収も可能になると思われた.

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