59才にて生存せる心内膜床欠損症の1例

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タイトル別名
  • A CASE OF ENDOCARDIAL CUSHION DEFECT IN A 59-YEAR-OLD FEMALE
  • 59サイ ニテ セイゾンセル ココロ ナイマクショウ ケッソンショウ ノ 1レ

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抄録

59才にて生存せるECD (心内膜床欠損症)の1例を報告する. 50才以上のECDの長期生存者の報告が少ないこと,その特異な奇形のため診断上にも種々の問題点があり,これらについて考案する. 8年来の動悸,労作時の呼吸困難にて来院した.胸骨左縁第3肋間に最強点を有するLevine 4/6度の収縮期雑音と, II音肺動脈成分の亢進が認められた.胸部X線像では心拡大(CTR 66%)と肺動脈の拡張蛇行がみられ,入院時の心電図は心房細動,右室負荷の所見であつた.心房細動は,強心薬,利尿薬などの治療後I度房室ブロックを伴う洞調律となつた. MモードUCGでは,心室中隔の奇異性運動,僧帽弁が心室中隔へ入り込む像がとらえられ,心断層図では,心房一次中隔欠損,僧帽弁の変形,亀裂がとらえられ,診断上有用であつた.観血的心カテーテル検査の所見と合わせ,心室中隔欠損,三尖弁亀裂のない不完全型ECDであつた. ECDは幼少時にてほとんどの例が死亡するが,それは,僧帽弁逆流が大量であること,短絡量が多く呼吸器感染に罹患し易いなどの因子が挙げられる.一方,高令者においては,不整脈死が多いとされる.本例では,僧帽弁逆流が少量であること, I度房室ブロックはあるが洞調律を保ち得ていることなどが,長期生存ならしめているものと考えられる.今後,不整脈,心不全,感染症などの合併症に注意し,観察してゆく予定である.

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