Glucagonomaの1症例

書誌事項

タイトル別名
  • A CASE OF GLUCAGONOMA
  • Glucagonoma ノ 1 ショウレイ

この論文をさがす

抄録

Glucagonomaの詳細な報告例はいまだ少ない.われわれは高グルカゴン血症を認め,血管造影にて濃染像を確認し,手術により切除しえた本症の1例を経験したので血中グルカゴン(total GLI GI)の動態を中心に諸知見を加えて報告する.症例: 39才,女.主訴は1年8カ月来の皮膚症状,舌炎,脱毛,中等度の貧血あり. 1)ブドウ糖経口負荷で境界型.同時に測定したGIは前値683pg/m1, 30分値1054. 2)ブドウ糖静脈内負荷でGIはわずかに増加. 3)グルカゴン負荷で血糖と血中インスリンは軽度に増加. 4)アルギニン負荷,インスリン負荷ではtotal GLI, GIの変動は不明瞭. 5)血漿アミノ酸分画は2, 3のものを除いて著減. 6)血中ガストリン,セクレチソは正常,モチリンは高植. 7)血清総蛋白,総コレステロール,亜鉛は減少. 8)総合アミノ酸製剤,亜鉛含有製剤の投与はともに皮疹の改善に有効. 9)開腹により径1cmの腫瘤を触知し膵体尾部切除を施行.術中に採取した門脈底のグルカゴン値は腫瘤の切除により速やかに減少. 10)組織像は膵島A細胞腫(悪性).組織中の高グルカゴン活性を確認. 11)術後,諸病態は著明に改善. 12)ただし高モチリン血症は持続しており,定期的に経過を観察中.以上のごとく本例はかなり定型的なglucagonoma症例である.従来,本疾患の予後は概して不良とされるが,希な疾患であるが故に診断が遅れるのも一因と思われる.病態の十分な認識によつてより早期の診断が期待されよう.

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ