口蓋扁桃の神経支配と口蓋扁桃摘出術における局所麻酔法について

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タイトル別名
  • コウガイ ヘントウ ノ シンケイ シハイ ト コウガイ ヘントウ テキシュツジュツ ニ オケル キョクショ マスイホウ ニ ツイテ
  • [Innervation of the palatine tonsils and local narcosis for palato-tonsillectomy].

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抄録

著者は人口蓋扁桃の水平断と前頭断, 家兎扁桃の矢状断と前頭断による連続切片標本を作製し, 銀染色を行った. 人および家兎の口蓋扁桃に分布する神経線維と, その進入路, 走行経過, 終末枝の存在部位などを立体的に解明した. 更に家兎の埋没扁桃についても, 種々の検討を加えた. それらの所見から, 実地臨床上, 口蓋扁桃摘出術に最も安全で合理的な, しかも必要で十分な局所麻酔法を知ることが出来た. 以上の研究成績をまとめると次の通りである.<BR>口蓋扁桃の上・下の両極より扁桃中隔根部に進入する混合線維は, 被膜の近くで上, 下両極よりの線維によって第一次神経叢をつくり, 以後血管に纏絡して走行するほか, 小血管やリンパ管に終網を作る. また一部は扁桃中隔内を進む途中, リンパ小節内に終末枝を送り, 或いは分枝を形成し, 扁桃遊離面に近い中隔の末梢部に達して, ここに第二次神経叢を構成する. ここより更に進んだ分枝は粘膜上皮下に叢状纏絡を作つたり, 拡散したりして, 上皮基底部の結合織に到達する. しかし, この第一次神経叢, 第二次神経叢には神経細胞は存在しない.<BR>家兎の口蓋扁桃は埋没扁桃であり, 支配神経は扁桃の前後両側の浅層と深層の両方より進入するものが多い. 口蓋扁桃中隔を作る結合織をもたないので, 神経は実質内で細網をつくるほか, 小血管やリンパ管にも終網をつくり, 更に末梢は粘膜下の結合織層に叢状纏絡をつくつて終るが, 神経細胞は存在しない.<BR>口蓋扁桃摘出術の際の局所麻酔の要所は, 神経線維の進入経路から考察して, 神経線維を遮断することである. この目的のために前口蓋弓の口蓋扁桃への移行部は最も重要である. ここの丁度粘膜下に, 上極および下極からHilusへ向う神経線維が非常に浅く走行しているので, 麻酔液は, 表面麻酔を施した後に, Hilusに向って前口蓋弓に沿った上極と下極からゆつくりと浅く注射する. これは, 口蓋扁桃への主要線維の進入経路にあたっているからである. 注射液が十分吸収されるまで待ち, Hilusへの深部直接注射は, ここがショックを引きおこし易いTrigger Zoneにあたっているために非常に危険である.

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