大腸菌における酸耐性調節機構
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- 相磯 聡子
- 杏林大学保健学部分子生物学教室
書誌事項
- タイトル別名
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- Regulation of acid resistance in Escherichia coli
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抄録
大腸菌は酸に対し高い耐性を示す。大腸菌にはAR1からAR4の4つの酸耐性機構が知られ,この中心と考えられているAR2はglutamate-dependent acid resistance(GDAR)系である。GDARにおける中心的な転写調節因子GadEの発現は少なくとも9種のタンパク質により調節されており,これにより様々な環境下において酸耐性が保証されていると考えられる。またアンチセンスRNAにより転写後調節あるいは翻訳調節を受けている可能性が示唆されている。さらにGadEタンパク質は分解調節されており,酸刺激が存在しなくなると迅速に細胞内から消失する。gadEは多剤排出系の遺伝子の一つmdtEFとオペロンを形成しており,二成分制御系の一つEvgA-EvgSの制御を受けている。EvgAはこのほかにも多剤排出系の遺伝子emrKYの発現を正に制御しており,多剤耐性と酸耐性が共通のシグナル伝達系により制御されている。細胞間シグナル分子の一つインドールにより酸耐性が誘導される,あるいはautoinducer IIの産生に関わるluxSがgadAB遺伝子の発現を制御する等の最近の報告は,酸耐性や抗生剤耐性がクオラムセンシングを通し制御されている可能性を示唆する。
収録刊行物
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- 杏林医学会雑誌
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杏林医学会雑誌 42 (3), 117-121, 2011
杏林医学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282679871045376
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- NII論文ID
- 130001204964
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- ISSN
- 1349886X
- 03685829
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可