妊娠25週から抗癌剤治療し, 生児を得た悪性リンパ腫合併妊娠の1症例

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  • Successful chemotherapy during pregnancy complicated with non-Hodgkin’s lymphoma

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抄録

妊娠中に悪性リンパ腫, とくにNon-Hodgkinリンパ腫に合併することはきわめて珍しいが, その際, 抗癌剤を含めた母体治療を優先するか妊娠の継続を優先するかで苦慮することが多い. 今回われわれは妊娠23週の時点でNon-Hodgkinリンパ腫と診断され, 妊娠中に化学療法を行い, 妊娠37週で生児を得た症例を経験し, その経過と文献的考察を交えて報告する.<br> 症例:29歳の初産婦で呼吸困難を主訴に内科を受診し, 胸部X線およびCT検査にて右頸部リンパ節の著明な腫脹を認め, 生検の結果, 妊娠23週の時点でNon-Hodgkinリンパ腫(少なくともII期)と診断された. インフォームド·コンセントをとったうえでただちに化学療法を開始し, 可能なかぎり妊娠を継続する方針を選択した. 化学療法はCHOP-II(cyclophosphamide, adriamycin, vincristine, prednisolone)を6クール行った. 化学療法中の胎児評価として, daily NST, 超音波診断層法検査, Pulse Doppler検査を適宜行い, また早産に備えて胎児の肺成熟を促すためにTRH製剤(protirelin tartrate), dexamethasoneを母体に投与した. 母体の骨髄抑制はみられず, 頭髪の脱毛以外治療を要する大きな副作用はなかった. 羊水腔の減少, NSTでのnon-reactive所見から, 妊娠37週6日, 選択的帝王切開術を行い, 2586gの女児をアプガースコア1分後9点/5分後9点で娩出した. 児に奇形はみられず, 臍帯血所見で骨髄抑制はなく, 胎盤にも異常所見は認めなかった. 母体はその後, 前縦隔に1×3cmの小さな腫瘤の残存を認めたため追加治療を行ったが, 1年たった現在も母児ともに経過は良好である.<br> まとめ:妊娠を継続しながら抗癌剤を投与する場合, 抗癌剤の児に与える影響を考慮しなければならない. 今回, 本人ならびに家族の同意を得て妊娠を継続し, 妊娠25∼36週まで化学療法を行い, 妊娠37週で健康な生児を得た. 文献的にはわれわれと同様なNon-Hodgkinリンパ腫合併妊娠で化学療法を行い生児が得られたという報告もみられる. 妊娠中の化学療法に対する十分なインフォームド·コンセントが必要であるが, 時期を逸しない治療のためには妊娠中の化学療法は可能と思われた.

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