胸部症状を初発症状とし,進行性の肺高血圧を呈した大動脈炎症候群の1例

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タイトル別名
  • A case of aortitis syndrome with progressive pulmonary hypertension preceded by symptoms of chest

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抄録

大動脈炎症候群は大動脈とその主要分枝を中心とした狭窄や閉塞性病変, または拡張性病変とその末梢の乏血症状を含めて総称した疾患である. その後本症候群の病変部位は肺動脈にも及ぶことが知られるようになったが, 肺循環系の病変による症状はほとんど表に出ることが少ない. 今回われわれは胸痛や咳などの胸部症状を初発症状とし, 画像所見になどより大動脈炎症候群と診断され, 著しい肺動脈病変に伴う肺梗塞の胸部CT像や進行性の肺高血圧を呈した治療困難な症例を経験したので報告する.<BR>症例は20歳代, 女性. 高校生のころ脈が弱いと健診でいわれたことあり. 21歳時, 風邪症状と背中や胸の痛みと息苦しさで初診. 胸部X線写真で左肺に浸潤影を認め肺炎として加療され軽快した. 2カ月後同じような症状が出現したが一過性であった. その後は階段昇降時の息切れや動悸や疲労感, 脳貧血症状は感じていたが普通に生活できていた. 翌年胸部X線写真で多発性の陰影が出現したが, 前年とは別の部位で前年の陰影は消失していた. 若年女性で両上肢の「脈なし」状態と炎症所見, 血管造影の結果から大動脈炎症候群と診断した. 腹腔内の動脈病変が著しく, 心臓カテーテル検査では肺動脈圧は80/25mmHgでmulti-detector CTでの肺動脈病変も著明であった. その後も肺動脈病変は改善を認めず肺動脈圧も少しずつ上昇しており, 今後肺移植を検討せざるを得ない病態と考えられる.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 42 (1), 89-97, 2010

    公益財団法人 日本心臓財団

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