運動介入の医療経済効果の評価方法の検討

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タイトル別名
  • INVESTIGATION OF EVALUATION OF MEDICAL ECONOMY EFFECTS OF EXERCISE INTERVENTION
  • ウンドウ カイニュウ ノ イリョウ ケイザイ コウカ ノ ヒョウカ ホウホウ ノ ケントウ

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抄録

わが国において, 第1次予防としての地域における運動介入の医療経済効果の評価に関する研究はほとんどみられない.我々は, 以前A村で実証した高齢者に対する運動の医療経済効果についての追跡並びに他の1市, 1町, 1区での高齢者への運動介入の医療経済効果の検証を通じて, 運動介入の医療経済効果を評価する新たな方法について検討した.A村では, 持久的運動とマシンを用いた筋力トレーニングによる運動群と同人数の対照群について, 運動開始から5年間の年間医療費を追跡した.各年次の医療費をみるだけではなく, 開始時の医療費に翌年以降の医療費を加えていく累積医療費の推移もみた.B市では, 持久的運動と自重を用いた筋力トレーニングを行った運動群と運動群に性・生年を一致させた3倍の人数の対照群とをとり, 運動開始前3点と開始後2点の5月分の医療費を追跡した.各年の5月分の医療費をみるだけではなく, 開始前3点の医療費の平均値に開始以降の5月分の医療費を加えていく累積医療費の推移もみた.C町では, 自重を用いた筋力トレーニング, 輪投げ, ボールエクササイズの3種類のいずれかを行う運動群と運動群に性・生年を合わせた対照群について, 運動開始前2点と開始後2点の5月分の医療費を追跡した.開始前の2点の医療費の平均値に開始以降の5月分の医療費を加えていく累積医療費の推移もみた.東京都のD区では, 自重を用いた筋力トレーニングを行う運動群の5月分の医療費について開始前2点と開始後2点を追跡した.対照群をとる代わりに区全体の医療費から算出したシミュレーションと運動群との医療費の比較を行った.運動開始初年の5月分の医療費に2年目の5月分の医療費を加えた累積医療費の比較も行った.A村では, 累積医療費をみることで, 運動群と対照群の医療費の差の拡大がより明確となった.B市やC町では, 医療費の推移をそのままの形で示すと, 運動と医療費との関係は判然としないが, 累積医療費の形で経年的に追跡するとその差が判りやすく示された.D区における運動群とシミュレーションの比較でも, 累積医療費を見ることで, 両者の差の拡大はより明確となった.毎年5月分の医療費は, 個人的に通知される制度があり, 本人の合意が得られれば手に入る資料である.本研究では, 全国どこの市町村や健康保険組合でも, 何時でも出来る簡便で説得力のある医療経済効果の新たな評価方法を提示した.今後, これらの方法の有効性をさらに実証していく必要がある.

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