胆汁酸の界面活性作用と膜障害について

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  • RELATIONSHIPS BETWEEN SURFACE ACTIVITY AND MEMBRANE EFECT BY BILE SALTS

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抄録

胆汁酸は臨床では胆石溶解薬として使用されているが, 界面活性作用を有するため肝障害などの副作用が認められている.種々の界面活性物質はヒト由来単離肝細胞障害作用を現わし, 低張性溶血に対し低濃度での溶血阻止と高濃度での溶血促進の二相性作用が認められている.今回, 著者は4種の胆汁酸Chenodeoxycholic acid (CDCA) , Deoxycholic acid (DCA) , Ursodeoxycholic acid (UDCA) , Cholic acid (CA) について生体膜作用をラット単離肝細胞からglutamic oxalacetic transaminase (GOT) , lactic dehydrogenase (LDH) の細胞外への逸脱と, ラット赤血球を用いた低張性溶血に対する二相性作用, ならびに界面活性作用について検索した.さらに, 界面活性物質であるAlkyltrimethylammonium SaltsのDecyltrimethylammonium Bromide (C10) , Dodecyltrimethylammonium Bromide (C12) , Tetradecyltrimethylammonium Bromide (C14) , Hexadecyltrimethylammonium Bromide (C16) についても同様の検索を行った.胆汁酸の単離肝細胞障害作用は4×10-4Mまでは, いずれの胆汁酸においても細胞内酵素の逸脱は認められなかったが, 1×10-3MではCDCAとDCAのみに明らかなGOT, LDHの逸脱作用が認められた.Alkyltrimethylammonium Saltsではアルキル鎖の長いものがGOT, LDHの逸脱が強かった.C10では2×10-3M, C12では4×10-4M, C14, C16では2×10-5Mより酵素逸脱を認め, その程度はC16が最も強かった.胆汁酸の低張性溶血における二相性作用はCDCAとDCAでは6×10-5Mより溶血阻止作用が, 2×10-4Mより高濃度では溶血促進が認められた.UDCAとCAでは二相性作用は認められなかった.Alkyltrimethylammonium SaltsではC10が1×10-3M, C12は1×10-4M, C14とC16は共に2×10-5Mまで溶血阻止作用が認められ, より高濃度では溶血促進作用が認められた.胆汁酸の界面活性作用は1×10-3MではCDCAが27Dyne/cm, DCAが23Dyne/cm, UDCAとCAが18 Dyne/cmの表面張力低下作用を認めた.Alkyltrimethylammonium Saltsでは1×10-3MでC16とC14が35 Dyne/cm, C12が26 Dyne/cm, C10が10Dyne/cmの表面張力低下作用を認めた.以上より, 被験薬物の生体膜作用を単離肝細胞に対する細胞内酵素逸脱作用と低張性溶血に対する二相性作用について検索した結果, 生体膜作用は当該薬物の界面活性作用に概ね相関し, それらの強さは胆汁酸ではCDCA≒DCA>UDCA≒CA, Alkyltrimethylammonium SaltsではC16≧C14>C12>C10の順であった.この界面活性作用は肝障害の発生とも関連するとも考えられ, 薬物の生体膜作用としての界面活性効果については十分な検討が必要であると思われる.

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