人物誤認について

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タイトル別名
  • MISIDENTIFICATION SYNDROME

抄録

「人物誤認」の症例を介して, その文献的展望を行い, 臨床的考察をすすめた.古くから知られているこの現象が等閑視されていることを指摘する一方, 本邦での30年にわたる成果を提示した.体験の中核をなす「分身」, 「替え玉」, 「代役」の存在体験はAmphitryonの伝説にみる「ソジーの錯覚」を文脈とする「Capgras症候群」から区別され, これとFregoli型体験, 自己替玉体験そして形姿交換体験が「人物誤認」論の中心にあると考えた.その際「知っている」人物, 「知らない」人物というもっとも常識的で自明な体験を欠いてこの症状の成立しないことを強調した.当該体験は, 「妄想知覚」, 「Gestalt分析」の手法で分析され, 他方離人症, 既視感, 自己視と近縁で卑近な関係にある.ちなみにこれらの症状は感覚の情報処理の失敗, 不全 (神経心理学的研究) として解析されるところでもある.さらに内因精神病, なかんずく分裂病も「人物誤認」の症状で構成されることから, 「神経学的検討」が分裂病で行われる可能性は否定できない.また内因精神病の診断にさいして体験の形式と内容が問い質されるが, ここに取りあげられた体験でも体験内容の意義は無視しがたく, 両者が診断の上で均等の重みを示すところである.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204835739904
  • NII論文ID
    130001826733
  • DOI
    10.14930/jsma1939.52.503
  • ISSN
    21850976
    00374342
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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