洞不全症候群における薬理学的自律神経遮断後の洞結節自動能回復時間による洞機能の臨床的評価

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  • CLINICAL EVALUATION OF SINUS NODE DYSFUNCTION USING SINUS NODE RECOVERY TIME AFTER PHARMACOLOGIC AUTONOMIC BLOCKADE IN SICK SINUS SYNDROME

抄録

洞不全症候群 (SSS) において最大洞結節自動能回復時間 (maxSRT) は重症度の指標とされるが, 臨床像と一致しない場合も多く, 自律神経の影響が関与するためと考えられる.そこで, 薬理学的自律神経遮断 (PAB) 後のSRTについて, 臨床電気生理学的検査 (EPS) , HolterECGを用いてその臨床的意義を検討した.対象はRubenstein基準により診断したSSS49例.硫酸アトロピン (AS) 0.04mg/kg静注投与後フ。ロプラノロール (prop.) 0.2mg/kgを静注投与しPABを行い, AS, prop.投与前後でEPSを行った.また, 一般に重症度の指標とされるPAB前のmaxSRT 5000 msecと, PAB前後での最大修正洞結節自動能回復時間 (maxCSRT) の変化率 (△maxCSRT) を用いて, A群: maxSRT<5000 msec, △maxCSRT<200%, B群: maxSRT<5000msec, △maxCSRT≧200%, C群: maxSRT≧5000msecに分類し比較検討した.分類の結果, A群29例, B群14例, C群6例.脳虚血症状を有した例は, A群31%, B群79%, C群100%, 心不全症状を有した例はA群10%, B群29%, C群17%, 心胸郭比 (CTR) はA群50.5%, B群53.2%, C群53.0%, pacemaker (PM) 植え込み例はA群10%, B群71%, C群66%と, 臨床像については, B群はC群類似でA群に比し重症であった.SRTはbeforeでA, B両群間に有意差なく, AS投与後も両群間に有意差を認めないが, PAB後にB群は初めて延長してA群と有意差を生じ, C群との有意差は消失した.しかし, PAB後B群でSRT5000msec以上となったのは8/14 (57%) のみであった.maxR-RはA群2.1秒, B群3.6秒, C群3.8秒とA群に比しB・C群が延長していた.基本周期長 (BCL) はbeforeもPAB後 (すなわち内因性心拍数: IHR) もA・B群間に有意差を認めなかった.EPS時のautonomic chronotropismの程度と方向性を%chronotropyで比較すると, A群に比しB群で交感神経の関与の大きいことが示唆された.洞房伝導時間はB・C群に測定し得ない例が多かった.さらにSSS全体をIHR正常・異常群で比較すると, それぞれの群にA・B・C群は含まれ, IHRでは重症度の判定はできなかった.以上, SSSにおいてPAB前SRT5000msecは重症と言われるが, 5000msec未満の例にも重症例は多く見られる.このような例は交感神経の関与が示唆され, PAB後初めてSRTが延長し, PAB前に重症と判定し得ぬ例であり, PAB前後のCSRTの変化率が重症度判定に有用であった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679811948928
  • NII論文ID
    130001828031
  • DOI
    10.14930/jsma1939.48.163
  • ISSN
    21850976
    00374342
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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