オットセイ下咽頭収縮筋の筋線維構成について

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  • MYOFIBROUS ORGANIZATION OF INFERIOR CONSTRICTOR OF THE PHARYNX IN SEAL

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抄録

筋線維構成と筋の機能との関係を探る一環として, オットセイ下咽頭収縮筋の筋線維構成を検査し, ヒトおよびニホンザルと比較してその特徴を明らかにした.材料はオットセイの雌10頭 (平均年齢7.0歳平均体重31.6kg) から得られたもので, 咽頭を喉頭とともに摘出, 10%中性ホルマリン中に保存した.次いで咽頭収縮筋を剖出, 観察の後, 下咽頭収縮筋の中腹部で筋線維走行に直角に全長にわたって筋断片を採取, ゼラチン包埋, 凍結薄切した.これらの切片についてSudanB1-ackB染色を施し, 筋線維を赤筋線維, 白筋線維, 中間筋線維の3型に分別し, 断面の筋線維数および筋線維断面積を計測した。結果: 1) オットセイの下咽頭収縮筋は中咽頭収縮筋の尾側に接するが, 両者間に筋層の重畳は認められないで筋の吻側端から輪状に走行していた.2) 咽頭収縮筋は縫線部長平均58.7mmでヒトの約40%長であり, 下咽頭収縮筋部はその内の約52%を占めていた.また, 筋層の厚さの平均は2.8mmでヒトの1.6倍, 筋重量は左右合わせて平均で6.59であった.3) 筋線維については, 筋腹横断面積は305.0mm2, 1mm2中の筋線維数781, 筋線維総数236, 885の平均で, 1mm2中の筋線維数はヒトおよびニホンザルのそれとおおよそ等しかった.また, 3筋線維型の比率の平均は白筋線維55.7%, 中間筋線維26.4%, 赤筋線維は17.9%で白筋線維はすべての例で50%以上であった.4) 筋線維の太さの平均は, 白筋線維1271.7μm2, 中間筋線維720.3μm2, 赤筋線維551.3um2で, その分布型は白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に右方に偏する正規分布型を示し, 白筋線維は低く, しばしば右方に第2峰が見られた.5) 筋線維の密度は全線維の平均で76.4%, その内白筋線維54.4%, 中間筋線維14.3%, 赤筋線維7.7%で, 全例とも同順位であった.すなわち, オットセイの下咽頭収縮筋は吻側端から輪状走行となり, 層が厚く, 白筋線維の発達が著しいことから, 速収縮性で蠕動運動が強いと解することが出来た.

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