甲状腺中毒症を呈した胞状奇胎の1症例

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タイトル別名
  • A case of hydatidiform mole complicated with thyrotoxicosis
  • 症例報告 甲状腺中毒症を呈した胞状奇胎の1症例
  • ショウレイ ホウコク コウジョウセン チュウドクショウ オ テイシタ ホウジョウキタイ ノ 1 ショウレイ

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抄録

絨毛性疾患患者において,血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin : hCG)の上昇により甲状腺機能亢進症を認めるということは一般的に知られている.血液検査にてホルモン値の上昇を認める症例は多く認めるが,臨床的に甲状腺中毒症の症状を呈する症例の発生頻度は不明である.今回われわれは,甲状腺中毒症を呈した胞状奇胎の1症例を経験したので報告する.症例は52歳,2回経妊2回経産婦.最終月経の4ヵ月後より5週間にわたって不正性器出血の持続を認めていたが,月経不順と考え放置していた.同時期より食欲不振,浮腫,腹部膨満感が出現し,当院内科へ紹介受診となった.内科にて腹部に巨大な腫瘤を認め,婦人科疾患を疑い当科紹介となった.当科初診時,子宮は著明に腫大しており,子宮腔内より出血を認めた.血液検査にてFT4 3.52mg/dl,TSH<0.01μU/mlと甲状腺機能の亢進を認めたため,直ちに内科よりチアマゾール,ヨウ化カリウム内服治療が開始され,FT4は速やかに正常化した.子宮内膜細胞診にてトロホブラストを認め,血中hCGを測定したところ681676mIU/mlと高値であり絨毛性疾患が疑われた.子宮摘出の方針としたが,手術予定日の2日前に奇胎の自然排出を認めた.予定どおり子宮全摘術を施行したところ,病理組織検査にてトロホブラストの筋層浸潤をわずかに認め侵入奇胎と診断された.術後,血中hCGは速やかに低下し,術後1年経過した現在でも血中hCGの再上昇は認めていない.また甲状腺機能も正常状態を維持している.絨毛性疾患の治療にあたっては,甲状腺機能亢進状態の有無についても考慮する必要がある.〔産婦の進歩63(4):505-509,2011(平成23年11月)〕

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