尿酸ナトリウム1水和物(MSU)のマウス皮下への接種に伴う生体反応

DOI
  • 稲井 邦博
    国立病院機構あわら病院臨床研究科 福井大学医学部病因病態医学講座分子病理学領域
  • 酒巻 一平
    国立病院機構あわら病院臨床研究科 福井大学医学部病態制御医学講座内科学(1)
  • 法木 左近
    福井大学医学部病因病態医学講座腫瘍病理学領域
  • 内木 宏延
    福井大学医学部病因病態医学講座分子病理学領域
  • 上田 孝典
    福井大学医学部病態制御医学講座内科学(1)
  • 津谷 寛
    国立病院機構あわら病院臨床研究科

書誌事項

タイトル別名
  • Local Skin Response due to Subcutaneous Injection of Monosodium Urate (MSU) Crystals in Mice

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抄録

われわれはこれまでin vitro培養系で,尿酸ナトリウム1水和物(monosodium urate monohydrate : MSU)結晶が陽性に荷電したがんペプチドワクチンと結合し,樹状細胞へのワクチンペプチドの担体として利用可能であることを報告してきた.しかし,MSU結晶を生体に投与した場合の組織反応については不明である.今回,尿酸から合成したMSU結晶を超音波破砕して作成したMSU結晶断片をマウス皮下に接種し,接種7日目までの生体反応を観察するとともに,7日目の組織反応を病理学的に検討した.次に泥状化した尿酸粉末を同様に皮下に埋没した場合の組織所見と比較した.MSU結晶を接種した部位には,活性化マクロファージを中心とする多数の炎症細胞浸潤を伴うgranulation tissueが形成され,De Galantha尿酸染色を施行すると,これら炎症細胞中にMSU結晶の貪食所見が認められた.炎症反応は結晶断片の周辺で強く,結晶が凝集して塊状を呈している部分ではほとんど認められなかった.一方,結晶構造の異なる尿酸粉末を皮下に埋堀しても,炎症細胞浸潤はほとんど認められなかった.MSU結晶投与に伴う炎症の病理組織所見に比べ,生体反応は軽微で,接種部位に発赤,腫脹などの急性炎症反応所見は観察されなかった.ヒト痛風結節症例では結晶の大きさに比し炎症反応は軽微であるが,MSU結晶を投与した部位も組織所見に比し炎症所見は軽微であることから,炎症反応の程度や,誘導される炎症細胞の種類には,結晶構造やその大きさに関連する可能性が推察された.また,MSU結晶の貪食は結晶塊の周囲から生じていることより,炎症細胞の誘導が長期にわたり持続する可能性が推測される.in vitro実験で,MSU結晶には未熟樹状細胞から成熟樹状細胞への分化誘導効果も認められることから,このような貪食反応はin vivoにおける単球・マクロファージからの樹状細胞誘導や,MSU結晶に付着させたワクチンペプチドの徐放化に繋がる可能性も期待される.MSU結晶はin vitroにおいて,安全性の高いがんワクチンペプチドの担体となる可能性が示唆された.

収録刊行物

  • 痛風と核酸代謝

    痛風と核酸代謝 36 (1), 15-22, 2012

    一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会

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