突然死の後,剖検によって診断し得た肥大型心筋症の1例

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タイトル別名
  • A case of hypertrophic cardiomyopathy diagnosed by autopsy after sudden death

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抄録

症例は79歳,男性.脳梗塞の後遺症で右片麻痺,両側下肢の拘縮があり,寝たきりの状態であった.2006年11月,腹痛,嘔吐を認め,イレウスの診断で当院に搬送された.入院時の心電図で,II,III,aVFで異常Q波,V1で高いR波を認めた.開腹手術によりイレウスの整復を行った.術後,発熱などの感染所見を認め,抗菌薬などで治療を行い,いったん状態は改善した.術後28日目,発熱,咳,悪寒,戦慄など感染症の再燃所見を認め,意識は正常だったが突然心肺停止の状態になり死亡した.<BR>剖検で左心室の著明な求心性の肥大,内腔の狭小化を認め,組織で心筋に錯綜配列,叢状線維化を認めた.脾臓で敗血症の所見を認め,肺で肺膿瘍および器質化した誤嚥性肺炎の像を認めた.<BR>生前には全く心疾患を疑われておらず剖検によって初めて肥大型心筋症と診断し得た.肥大型心筋症の多くが,本例のように生前には診断されていないことが多いと思われる.心疾患を疑わせる症状がなくても本症例のように全身状態の悪化を誘因に突然死をきたす可能性があり,心電図異常のある症例については十分な注意が必要と考える.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 42 (4), 518-524, 2010

    公益財団法人 日本心臓財団

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