肥大型心筋症を伴う僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術後, 左室流出路狭窄・溶血をきたした1例

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Left ventricular outflow obstruction and hemolytic anemia after mitral valve repair for mitral regurgitation with hypertrophic cardiomyopathy

この論文をさがす

抄録

肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy; HCM)を伴う後尖逸脱による僧帽弁閉鎖不全症(mitral insufficiency)に対して僧帽弁形成術(mitral valve reconstruction)を施行後, 左室流出路狭窄および左室内狭窄が顕在化し溶血をきたした症例を経験した. 症例は65歳, 女性. 2004年10月胸部痛にて近医受診, 精査にて閉塞性肥大型心筋症および僧帽弁後尖逸脱による僧帽弁閉鎖不全症と診断された. Cibenzolineおよびcarbedilolにより症状は改善していた. しかし, 2009年8月ごろから心不全症状が悪化したため, 当院紹介となった. 心臓超音波検査では, IV度の僧帽弁閉鎖不全を認めたが, 左室内および左室流出路狭窄は認めず, 僧帽弁形成術を行った. 遺残逆流なく終了したが, 術後4日目に心雑音および溶血性貧血をきたした. 心臓超音波検査では, 僧帽弁逆流は認めず, 左室流出路狭窄100mmHgを認めた. β遮断薬およびcibenzolineの再開, 輸血にて心雑音は消失し, 左室流出路狭窄も改善した. 僧帽弁閉鎖不全が消失し, 左室容量負荷が改善したため, 左室流出路狭窄が顕在化したと思われる. 溶血性貧血が生じた原因は不明であるが, かかる症例には, 術中に左室流出路の筋切除, また体外循環下に左室容量負荷が減少した時点で, 超音波検査を行い, 可能なら左室内狭窄となり得る中隔の筋切除を行うべきと思われた.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 42 (12), 1603-1608, 2010

    公益財団法人 日本心臓財団

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ