アルツハイマー病治療におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の脳循環改善作用とその機序について—NO神経の貢献

  • 戸田 昇
    滋賀医科大学名誉教授,トヤマ循環器病治療薬研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Nitrergic cerebrovascular regulation as affected by donepezil
  • アルツハイマー病治療におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の脳循環改善作用とその機序について : NO神経の貢献
  • アルツハイマービョウ チリョウ ニ オケル アセチルコリンエステラーゼ ソガイヤク ノ ノウ ジュンカン カイゼン サヨウ ト ソノ キジョ ニ ツイテ : NO シンケイ ノ コウケン

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抄録

アルツハイマー病(AD)の治療にドネペジルを始めとするアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬が広く使用されている.これらの薬物は,AD患者の脳組織で減弱しているコリン作動性神経の働きを補完する目的で合成されその有効性が証明された.最近,ADの発症と進展の原因のひとつとして脳循環障害が取り上げられており,そのメカニズムとして一酸化窒素(NO)を介する血管拡張・血流増加の減弱が注目されている.AChE阻害薬はAD患者の脳血流を改善しADの症状を軽減する.この循環作用の少なくとも一部にAChE阻害作用が関与すると考えられるが,その作用機序について納得のいく説明がなされていない.脳血管は外来性AChによって内皮依存性の拡張をひき起こすが,血管を直接支配するコリン作動性神経は脳動脈拡張には関与しない.従って,自律神経由来のAChは内皮からのNOを介して脳循環を改善することはなく,AChE阻害薬がこのレベルで効果を発揮するとは考えられない.我々は副交感神経系由来で脳血管を拡張するNO作動性神経の役割について,1990年に世界に先駆けて報告した.本総説では,翼口蓋神経節のレベルで節前線維から遊離されるAChの分解を阻害し,節後線維であるNO作動性神経の働きを増大することで,AChE阻害薬が脳動脈拡張,血流増加をひき起こすとの考えについて,これまでの研究成果をもとに解説したい.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 141 (3), 150-154, 2013

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (66)*注記

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