分子標的治療薬のエビデンス・レビュー2012-1  細胞表面分子を標的とした生物学的製剤

  • 川上 純
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座(第一内科)

抄録

  生体の炎症反応や免疫反応の分子機構が明らかとなるに従い,それらをターゲットにした分子標的治療薬が急速にリウマチ・膠原病の分野に入ってきた.それらの多くは生物学的製剤に分類され,サイトカイン,細胞表面分子,細胞内シグナル伝達分子を抑制し臨床効果を発揮する.本レビューでは細胞表面分子,特にT細胞とB細胞に発現する細胞表面分子を標的とした治療薬について解説する.T細胞の細胞表面分子を標的とした薬剤ではabataceptがあげられる.AbataceptはCTLA4−Ig分子で,ヒトCTLA−4の細胞外部分にヒトIgG1Fc部分を結合させた融合タンパク質であり,抗原呈示細胞のCD80/86とT細胞のCD28の相互作用:CD28を介するT細胞活性化を抑制するのが主な作用と考えられている.RAに関してはいくつも臨床治験で有効性が示され,本邦においても全例調査が進行中である.B細胞表面の標的となる分子にはCD20,CD22があり,BAFF/APRILに対する中和抗体や可溶性受容体融合タンパク質もそれらが結合するB細胞の受容体からのシグナル伝達を抑制して作用を発揮する.RituximabはCD20に対するキメラ抗体であり,投与後約6ヶ月は末梢血B細胞は消失し,その後に出現するB細胞は再構築されたナイーブB細胞と報告される.Rituximab投与はCD4+T細胞減少も誘導し,B細胞の再構築とB−T細胞間相互作用の制御により薬理作用を発揮すると考えらている.BAFF/APRILの過剰産生は自己寛容の破綻を誘導し,抗BAFF抗体belimumabが,2011年に米国でSLE治療薬として承認された.現在も数種の薬剤が開発・臨床治験中であり,治療ターゲットとして注目されている.<br>

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