イブニング教育講演  Toll様受容体の活性制御機構とその破綻による炎症

抄録

  我々の免疫機構は,病原体成分に特異的に応答し,感染防御反応を誘導する病原体センサーを有している.Toll様受容体(Toll-like receptor, TLR)はその代表的なセンサーの一つである.TLRは,その細胞内局在によって2つに大別される.細胞表面に,TLR1, TLR2, TLR4/MD-2, TLR5, TLR6, TLR10が発現し,菌体膜成分や鞭毛タンパクを認識する.一方,細胞内の小胞体やエンドソームにはTLR3,TLR7,TLR8,TLR9が発現しており,病原体由来の核酸に応答する.TLR3は2重鎖RNA,TLR7,TLR8は1重鎖RNA,TLR9は1重鎖DNAを特異的に認識する.TLRは病原体成分に特異的であると考えられてきたが,死細胞由来の成分や代謝産物にも応答し,肥満や動脈硬化など,非感染性炎症疾患に関与していることが明らかとなってきた.エンドトキシンのセンサーであるTLR4/MD-2は脂肪酸にも応答し,肥満の病態に関与していることが報告されている.一方核酸特異的なTLR7,TLR9についても,核酸に対する自己免疫応答への関与が指摘されている.TLR7,TLR9が自己核酸に応答しないように,免疫細胞は,TLR7/9の局在を厳密に制御していることが分かってきた.ここでは,TLRが如何に自己と病原体を識別しているのか,またその識別機構の破綻が,どのような病態をもたらすのか,現在明らかにされた知見を,我々のものも含めて紹介したい.<br>

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