MWS-1  フィラグリン欠損マウスにおける角層バリア機能異常と経皮免疫応答の亢進

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抄録

  フィラグリンの遺伝子変異は,アトピー性皮膚炎の主要な発症因子として報告されている.私たちは本研究で,フィラグリン欠損(Flg−/−)マウスを作成し,角層のバリア機能維持及び経皮免疫応答におけるフィラグリンの影響について検討した.<br>   生後早期のFlg−/−マウスは,落屑を伴い乾皮症様の外観を呈した.フィラグリンの分解産物を主な構成成分とするNMF(Natural moisturizing factor)はFlg−/−角層で著しい減少を認めたものの,角層内水分量や経皮水分蒸散量は正常だった.テープストリップを用いた実験から,物理刺激によるFlg−/−皮膚での角層剥離の亢進が示された.電子顕微鏡による観察から,Flg−/−角層におけるケラチンパターンの消失が確認され,これがFlg−/−角層の脆弱性に関与している可能性が示唆された.続いてカルセイン含有リポソームをマウス皮膚に塗布し,共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ,Flg−/−角層で色素透過性の亢進を認めた.これらFlg−/−角層の機能異常は,ハプテン誘導性接触過敏反応やタンパク抗原経皮塗布後の液性免疫応答の亢進をもたらした.<br>   我々が作成したFlg−/−マウスは,in vivoでのフィラグリンの機能を正しく評価し,バリア機能異常を有する皮膚への経皮的抗原曝露から疾患が発症するまでのアトピー性皮膚炎発症機序の解明につながる有用なツールとなる.<br>

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