MWS-5  先天性免疫不全症の病態解析,およびタンパク導入法を用いた治療法の探索

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抄録

  X連鎖無γ-グロブリン血症(XLA)は,BTK遺伝子の異常により骨髄におけるB細胞の分化障害をきたし,末梢血B細胞が欠損し,抗体産生不全と易感染性を特徴とする.治療としては,定期的な免疫グロブリン補充療法により感染の頻度を抑えることが可能になっている.しかし,診断前や感染症発症時に好中球減少の合併を呈することがあり,感染が重篤化することが問題となっているが,その原因は明らかでない.<br>   まずXLA患者由来好中球におけるROS産生を検討したところ,様々な刺激後のROS産生は対照群と比較して明らかに亢進していた.またXLA由来患者好中球ではROSの過剰産生により早期にアポトーシスを起こすことが分かった.さらに,膜透過性ペプチドであるHph-1を用いて正常なBTKをXLA患者由来好中球に導入すると,XLA患者の好中球での過剰なROS産生とアポトーシスが健常レベルにまで回復した.<br>   次に過剰なROS産生が起きるメカニズムを知るために,好中球機能を詳細に検討した.数名のXLAの好中球を用いた検討から,XLA患者の好中球は休止期ですでに,ROS産生準備段階(プライミング)状態にあることが分かった.さらに,正常好中球での解析から,正常好中球においては休止期のBTKはToll like receptor(TLR)の下流で働くMyD-88 adaptor like protein(Mal)を細胞質に留めている役割をしていて,PI(3)KやSFK, Sykの活性化が起こらないよう制御していることが明らかとなった.<br>

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