P1-07  中枢神経系の炎症性自己免疫病態形成に関わる病原性T細胞群の解析

  • 大木 伸司
    (独)国立精神・神経医療研究センター神経研究所 免疫研究部
  • レイバニー ベン
    (独)国立精神・神経医療研究センター神経研究所 免疫研究部
  • 山村 隆
    (独)国立精神・神経医療研究センター神経研究所 免疫研究部

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抄録

 これまで私たちは,多発性硬化症(MS)患者T細胞の網羅的遺伝子発現解析から同定した核内受容体NR4A2に着目し,病態形成への関与を検討してきた.今回,MSの動物モデルとして知られる実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いた解析から,NR4A2陽性T細胞による病態形成機構を明らかにするとともに,別種の病原性T細胞が病態形成に関わる可能性を示す.MOGペプチド免疫後のEAE発症マウスでは,中枢神経系(CNS)および末梢血のT細胞でNR4A2発現が亢進しており,これらはIL-17産生細胞であった.In vitroでTh17細胞への分化を阻害し,IL-17産生を抑制するNR4A2特異的siRNAを投与することで,MOG反応性T細胞のIL-17産生抑制を伴ってEAE病態が顕著に軽快した.さらに新規に樹立したヘルパーT細胞特異的NR4A2欠損(NR4A2cKO)マウスにEAEを誘導したところ,中枢神経系へのT細胞浸潤とIL-17産生が有意に低下し,EAE病態が顕著に改善したことから,自己反応性T細胞の病原性へのNR4A2の関与が示唆された.また興味深いことに,NR4A2cKOマウスは免疫後4週間頃から急性のEAEを発症し,このときIL-17産生細胞を含む複数のT細胞がCNSへ集積することから,C57BL/6マウスのEAEでは,時空間的に多様な病原性T細胞が病態に関与する可能性が示された.以上の結果は,MSの多様な病態を解明するための新しい手がかりを与えると考えられ,現在各T細胞群の機能について比較解析をすすめている.<br>

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