人工弁置換術による赤血球への傷害に関する臨床的ならびに血球形態およびレオロジー的検討

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  • Clinical morphological and rheological investigation of erythrocytes in patients undergoing prosthetic heart valve replacement

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抄録

目的:血液に機械的ストレスを与える可能性のある人工弁置換術例で赤血球への傷害を臨床的,形態的,レオロジー的に解析することを目的に以下の検討を行った.<br> 対象と方法:人工弁置換術後の14症例 (弁周囲逆流のない10例とある4例),自己弁形成術後の10症例,心臓弁膜症のない対照10例においてヘマトクリットを3%に調整した赤血球浮遊液を作成し,ニッケルメッシュ濾過法により赤血球の変形能を測定した.同時に臨床背景,血球形態や血液生化学検査を検討した.<br> 結果:自己弁形成術後や弁周囲逆流のない人工弁置換術後の症例における赤血球の変形能は対照群と変わらず,赤血球浮遊液を生理食塩水で作成しても等張塩化カリウム (KCl)溶液で作成しても正常であった.しかし,弁周囲逆流のある人工弁置換例では臨床的に弁置換術の回数が多く,低栄養,肝腎機能の低下,貧血や血小板減少,血清乳酸脱水素酵素 (lactic dehydrogenase;LDH)の高値を認め,赤血球にはさまざまな形態異常と変形能の有意な低下を認めた.<br> 結語:人工弁が赤血球に及ぼす機械的ストレスは弁の開閉による影響でなく弁周囲の逆流により生じ,赤血球の変形能を著明に低下させることが明らかとなった.逆流の程度と変形能低下の相関は今後の検討課題である.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 44 (9), 1135-1140, 2012

    公益財団法人 日本心臓財団

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