石灰乳胆汁の2例

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タイトル別名
  • TWO CASES OF LIMY BILE
  • セッカイ ニュウタンジュウ ノ 2レイ

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抄録

胆のう内容が灰白色不透明な乳汁様で,炭酸石灰を主成分としているものを石灰乳胆汁といい,比較的まれなものとされている.最近われわれは,石灰乳胆汁の症例を2例経験したので報告する.症例1は53歳の女性で,上腹部膨満感,嘔吐を主訴とし,腹部単純撮影で右季肋部に結石陰影を認め,胆のう造影では造影不良であった.胆摘を行なうと,胆のう内にビリルビン結石が3個あり,そのうち1個が胆のう管に嵌頓していた.胆のう内は,白色半流動性泥状物質で占められていた.症例2は34歳の男性で,上腹部疝痛を主訴とし,腹部単純撮影で,右季肋部に結石陰影を認め,胆のう造影では胆のうが造影されなかった.手術を行なった結果,胆のう頚部にコレステリン結石が嵌頓していることがわかった.胆のう内には微黄色透明粘稠な胆汁に混って白色泥状の物質を認めた.この物質は98%以上がCaCO3であった.<br> 石灰乳胆汁における臨床症状は,一般の胆石症と変りがないが,特徴として腹部単純撮影で胆のうが造影されること,胆のう管に結石が嵌頓しており,胆のう造影で新たに胆のうが造影されにくいことなどがあげられるが,われわれの2症例はいずれも腹部単純撮影では胆のう影は認めず,手術を行なった結果初めて本症と診断された.<br> 石灰乳胆汁の成分の大部分は炭酸カルシウムであり,成因としては, (1)胆のう管の閉塞, (2)胆のう炎, (3)胆のう内pHの上昇, (4)カルシウム塩の析出というメカニズムが考えられている.カルシウム代謝異常との関連は現在のところ不明で, 2症例とも血清カルシウム値は正常であった.

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