Epstein‐BarrウイルスDNAポリメラーゼ複合体の生化学的研究

  • 鶴見 達也
    名古屋大学医学部附属病態制御研究施設ウイルス感染研究部門

書誌事項

タイトル別名
  • Epstein-Barr Virus DNA Polymerase Complex.
  • Epstein Barr ウイルス DNA ポリメラーゼ フクゴウタイ ノ セ

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抄録

Epstein-Barr ウイルスDNAポリメラーゼは, EBウイルス産生状態におけるウイルスゲノム複製の中心的役割を演じる key enzyme である。ウイルス産生を誘導したBリンパ球から精製されたEBVDNAポリメラーゼはBALF 5蛋白質とBMRF 1蛋白質から構成されるヘテロダイマーであった。本稿ではEBVDNAポリメラーゼ複合体の生化学的特徴, 各サブユニットの生化学的特徴, さらにサブユニット間の相互作用について述べる。<br>EBVDNAポリメラーゼ複合体はローリングサークル型DNA複製に適した特徴であるポリメラーゼ processivity の非常に高い酵素であった。また誤って取り込まれたヌクレオチドを削り取る校正機能を担う3′-5′ exonuclease 活性を持っていた。各々のサブユニットを単独に発現するバキュロウイルス発現系を確立し各々のサブユニットを精製しその生化学的性状を調べてみるとBALF 5蛋白質がポリメラーゼ活性及び3′-5′ exonuclease 活性を担う catalytic サブユニットであることが判明した。一方, BMRF 1蛋白質は酵素活性はないが二重鎖DNAに強く結合する特性を持っていた。各サブユニット間の相互作用の解析からBMRF 1蛋白質はBALF 5蛋白質の持つDNAポリメラーゼ活性, 3′-5′ double strand exonuclease 活性を著しく促進させることが判明した。ポリメラーゼ反応及び exonuclease の反応の際BMRF 1蛋白質はプライマー末端でBALF 5蛋白質と複合体を形成しプライマー末端から離れないように安定化させることによりEBVDNAポリメラーゼ複合体は高い processivity を獲得すると考えられる。この特性はローリングサークル型DNA複製, 特に leading 鎖合成に適している。一方, 動的状態におけるプライマー末端のポリメラーゼ複合体の安定性に比べ, 静止状態におけるプライマー末端のEBVDNAポリメラーゼ複合体は不安定であることが示唆された。この特性は lagging 鎖合成時に岡崎フラグメントを合成後プライマー末端から離れて新しく合成されたRNAプライマーに再結合する recycling の機構を説明するのに適していよう。詳しく解析が進んでいる他の真核細胞及び原核細胞DNAポリメラーゼ複合体と対比することによりEBVDNAポリメラーゼ複合体を概観してみる。

収録刊行物

  • ウイルス

    ウイルス 44 (2), 177-191, 1994

    日本ウイルス学会

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