症例 高度の閉塞性肺血管病変を呈した鏡像型右胸心と半奇静脈結合を伴う静脈洞型心房中隔欠損症の1乳児例

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タイトル別名
  • An infantile case of sinus venosus atrial septal defect, mirror-image dextrocardia and hemiazygos continuation of the inferior vena cava with severe pulmonary vascular obstructive disease

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抄録

高度の閉塞性肺血管病変を伴った静脈洞型心房中隔欠損症の乳児例を経験し,きわめてまれな症例と思われるので報告した.<BR>症例はUカ月の男児で,生後5日目に心雑音と軽度のチアノーゼ,胸部X線で右胸心と心拡大を指摘された.乳児期に呼吸器感染を繰り返し,体重増加不良などの心不全症状が認められた.精査の結果,完全内臓逆位症に伴う鏡像型右胸心{I,L,I},半奇静脈結合と静脈洞型心房中隔欠損と診断された.肺動脈収縮期圧は69mmHgと高度の肺高血圧を呈した.大動脈の酸素飽和度は89%と低下しており,酸素投与で97%に上昇したが肺動脈圧は変化しなかった.開胸肺生検で肺小動脈の中膜は著しく肥厚し,内膜の細胞性増殖,線維性増殖と共に中膜の肉芽腫様血管壊死などの血管炎の所見が多く認められた.内膜病変の重症度を示すindex of pulmonary vascular disease(IPVD)は2.5と高く手術不適応と判定された.<BR>本症例の肺血管病変は通常の心房中隔欠損でみられる病理組織像とは異なり,肺小動脈の中膜がきわめて厚く,また主に血管炎の所見がみられたことから肺血管収縮が急激に繰り返されたものと考えられた.このことから,本症例の閉塞性肺血管病変は心房中隔欠損症のみからきたものではなく,心房中隔欠損症とは独立した原発性肺高血圧症を含む肺血管病変が合併したものと推定された.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 22 (3), 275-280, 1990

    Japan Heart Foundation

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