症例 心膜切開術後45年の長期経過後死亡した結核性収縮性心膜炎の1剖検例

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タイトル別名
  • An autopsy case of tuberculous constrictive pericarditis observed for 45 years after pericardiectomy

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抄録

症例は64歳,男性,1957年に結核性胸膜炎罹患後に収縮性心膜炎を続発し,他院にて心膜切開術を施行,良好な結果を得た.しかし,術後36年目の1993年より徐々に労作時の息切れが強くなり,精査加療を目的として1997年2月当院入院.理学所見では頸静脈怒張と心膜ノック音,両肺野のcoarsecrackle,右肺野の呼吸音の減弱,腹水および浮腫を認めた.胸部X線,CTでは著明な石灰化を伴う心膜の肥厚,および胸水,右胸膜肥厚,心エコーでは両房の拡大,両室の狭小化,三尖弁閉鎖不全,心嚢液貯留,下大静脈の拡大を認めた.心臓カテーテル検査では右室圧曲線にてdip and plateauを認め,諸所見より収縮性心膜炎の再燃による心不全と診断された.利尿薬,硝酸薬などにて症状の改善を得て一時退院したが,2002年1月全身状態悪化のため再度入院となった.5年前と比較し心エコー所見上収縮性心膜炎に関する諸指標に有意な変化は認めなかったが,腎不全をはじめとする全身合併症の増悪により2月12日死亡した.収縮性心膜炎に対する唯一の有効な治療法は心膜切開術であるが,多数例の術後成績にあるように長期予後は予測されたほど良好ではない.予後不良とする要因についてはいくつか考えられるが,本例の長期術後経過および剖検所見からは収縮性心膜炎の病態再燃がその主要因と考えられた.したがって,術後経過が良好な場合でも長期にわたる観察が必要であり,病態の再燃時には再手術についても検討すべきであると考えられた.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 35 (10), 713-718, 2003

    Japan Heart Foundation

被引用文献 (1)*注記

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