書誌事項
- タイトル別名
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- A Collective Review of <I>Vibrio vulnificus</I> Infection in Japan
- A Collective Review of Vibrio vulnificus Infection in Japan
- A collective review of <italic>Vibrio vulnificus</italic> infection in Japan (in Japanase)
抄録
Vibrio vulnificusは世界中の沿岸海水中に存在し, 本菌に汚染された魚介類の生食や創傷への海水曝露から感染する. 本症は四肢の壊死性筋膜炎を呈し, 急激な敗血症ショック状態へと移行する極めて予後不良の食水系感染症である. 1980年代になり西日本を中心に比較的多くの報告がなされはじめたが, 感染者が散発的に発生することから十分な疫学的調査はなされていない. 今回我々は1975年から2005年までの30年間におけるわが国の本症患者の誌上報告を基に, その疫学的, 臨床的特徴等に関する調査を行った. 医学中央雑誌, 国立情報学研究所論文情報ナビゲータ及びPubMedを用いて検索を行ったところ, 30年間で185例が報告されていた. 年齢中央値は59歳で, 男性が女性の約8倍の報告数であったが死亡率に差はなかった. 年別発生推移では, 九州北部地方が長期間の梅雨にみまわれた2001年に多数の報告例があり, また月別発生推移では海水温が上昇する7月から9月までに患者の約8割が発生していた. 地域別に見てみると約4割が有明海を取り囲む九州北部四県からの報告であった. 患者の約9割は何らかの肝機能障害を有し, その死亡率は経口感染型と創傷感染型で差が認められなかった. 症状の進行が速く致死率が高い本症に対しては予防活動が重要であり, 特に肝機能障害を有する患者には, 夏季の生鮮魚介類生食や海水浴を控えさせる啓発活動が必要である.
収録刊行物
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- 感染症学雑誌
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感染症学雑誌 80 (6), 680-689, 2006
一般社団法人 日本感染症学会