愛媛県西部佐多岬半島の阿弥陀池および亀ヶ池の堆積速度と堆積環境の変遷

DOI
  • 金井 豊
    (独立行政法人) 産業技術総合研究所地質調査総合センター深部地質環境研究センター
  • 井内 美郎
    愛媛大学沿岸環境科学研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Sedimentation rates and environmental changes of Lakes Amida and Kamegaike, Ehime Prefecture, Japan

抄録

愛媛県にある2つの海跡湖である阿弥陀池および亀ヶ池の堆積環境調査の一環として, 採取された底質コアを用いて堆積速度を求め, その堆積環境を検討した. その結果, 阿弥陀池での2ケ所の平均堆積速度は0.92cm/yと1.35cm/yで, 水深の浅い箇所の方が堆積速度が大きかった. 一方, 亀ヶ池で行った1ケ所の堆積速度は, 深度60cmよりも下位では0.54cm/y前後, 深度60cmより上位での堆積速度は約1.36cm/y前後と推定された. 堆積速度が変化した深度60cmに相当する年代は, 亀ヶ池に水門が設置された頃の1954年前後と推定され, 堆積物が海域に流失せずに堆積が促進されたためにその後は堆積速度が増大したものと考えられた. 阿弥陀池では池の水深の浅い場所の方が堆積速度が大きいのに対し, 亀ヶ池では水深の深いところの方が堆積速度が大きいと推定された. 小さな池でも両者では堆積状況が異なっており, 亀ヶ池では河川から運搬された懸濁物が一方向に移動・流出するのではなく, 水門によって池の中で巡回もしくは停滞するようになり, 深いところでより多く堆積しているものと考えられた. 本研究で得られた0.92-1.35cm/y (阿弥陀池), および1.36cm/y (亀ヶ池) という堆積速度は, 日本国内での他の湖沼と比較しても大きめの値であった. これは調査地域が柑橘類の栽培の盛んな畑作地域にあり, 農地利用のための開拓やその後の土地利用によって堆積物が浸食・運搬され易かったためと推定された. コアのPb-214, K-40放射線強度の深度分布は, 護岸工事や道路工事の時期に合致して変動するのが確認され, 阿弥陀池は小さな池であるので護岸工事の影響は岸から離れた中央部で採取されたコアの放射性核種濃度にまで影響が現れているとみられた. これらの結果は湖沼の堆積モデルや変遷に関する有用な知見となった.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680196985344
  • NII論文ID
    130004372556
  • DOI
    10.4096/jssj1995.58.93
  • ISSN
    18829457
    1342310X
  • データソース種別
    • JaLC
    • Crossref
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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