Education Program 3 多発性硬化症の臨床研究の最近の進歩:アストロサイトパチーからみた脱髄

書誌事項

タイトル別名
  • Recent progress in multiple sclerosis research: astrocytopathy in demyelinating diseases

抄録

視神経脊髄炎(neuromyelitis optica,NMO)は,NMO-IgGの発見により多発性硬化症(multiple sclerosis,MS)とは病態機序が異なる独立した疾患とする説が有力となっている.NMO-IgGが認識するaquaporin-4(AQP4)がアストロサイトの足突起に存在する水チャネル分子であることから,NMO-IgG(抗AQP4抗体)が,アストロサイトの足突起上のAQP4に結合し補体を活性化することでアストロサイト死を誘導するとされる.他方,Baló病は脱髄層と非脱髄層が交互に同心円状に分布する特徴的な病理像を示す.このような同心円状病巣は,MSやNMOでもみられることがある.私たちは,Baló病巣では脱髄巣も非脱髄巣もふくめて広汎にAQP4が脱落していることをみいだした.Baló病では,血管周囲性に抗体や補体の沈着はみられず,血清抗AQP4抗体も陰性であることから,抗AQP4抗体非依存性アストロサイトパチーが,オリゴデンドロサイトパチーを誘導して,脱髄をひきおこすとの新しい説を提唱している.同様な血管周囲性の抗体や補体の沈着をともなわないAQP4の脱落は,MSやNMOの病巣でもみられることがあり,自己抗体非依存性アストロサイトパチーは広く脱髄性疾患に共通するメカニズムである可能性が高い.<br>

収録刊行物

  • 臨床神経学

    臨床神経学 50 (11), 788-793, 2010

    日本神経学会

参考文献 (18)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680011293568
  • NII論文ID
    130004504627
  • DOI
    10.5692/clinicalneurol.50.788
  • ISSN
    18820654
    0009918X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • Crossref
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ