香酸カンキツ雑種実生群における不稔葯の形態と細胞質–核雄性不稔の遺伝

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  • Morphology of Sterile Anthers and Inheritance of Cytoplasmic-genetic Male Sterility in Zygotic Seedlings of Polyembryonic Acid Citrus

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抄録

香酸カンキツ類における無核品種育成のための重要な形質である雄性不稔性の遺伝については,これらが多胚性であり,幼若期間も長いことから,ほとんど分かっていない.そこで,16 種類の雄性稔性の香酸カンキツを用いた 22 組合せの交配を行って雑種実生を獲得し,ウンシュウミカン成木に高接ぎして開花させた.さらに,単胚性で雄性不稔である HY16 と‘清見’を種子親にして 4 交配を行って雑種実生を作出し,幼樹開花させた雑種実生を遺伝分析に用いた.26 交配組合せのうち,6 品種を種子親として用いた 21 組合せにおいて雄性稔性実生と雄性不稔性実生が様々な比で分離した.一方,‘スダチ’を種子親に用いた 3 交配組合せでは雄性稔性実生のみが出現した.ほとんどの交配組合せにおいて,後代にみられた不稔葯は大きさによって不完全発育と不発育に分けられた.これらの結果から,雄性不稔性に関する不稔細胞質要素(S)を持つ‘ユズ’,レモンおよびウンシュウミカンのいずれかの細胞質を持つ 8 品種は雄性不稔実生を分離し,雄性稔性に関する稔性細胞質要素を持つブンタンの細胞質を持つ‘スダチ’は雄性稔性実生のみを生じることが示唆された.また,これらの結果から,一つの上位遺伝子 R1 と二つの補足遺伝子 R2R3 からなる優性の稔性回復核遺伝子群が不稔細胞質を持つ個体の稔性の回復と不稔葯の大きさを制御していることが示唆された.因に,遺伝子型 (S)r1r1r2r2 - - では不発育葯となり,遺伝子型 (S)r1r1R2 - r3r3 では不完全発育葯になると推定された.主要な香酸カンキツ品種の雄性不稔遺伝子型に関するこれらの知見は今後の無核香酸カンキツの育種に貢献することが期待される.

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