硫酸マグネシウム大量投与とα‐メチルドパの併用が有効であった重症破傷風の1例

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  • Management of Autonomic Dysfunction in Severe Tetanus: The Use of Magnesium Sulfate and .ALPHA.-Methyldopa

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抄録

自律神経障害による血圧の不安定性に対し硫酸マグネシウムとα-メチルドパの併用を行い良好な結果が得られた症例を経験したので報告する。症例は63歳の男性。農作業中に左示指に負った挫創より破傷風を発症した。自律神経障害を伴い著しい血圧の変動がみられたため,硫酸マグネシウムの大量投与を開始した。とくに臨床上問題となるような副作用の発現はなく,急激に血圧が上昇する頻度が減少し改善傾向がみられたが十分なコントロールには至らなかった。そこで,α-メチルドパの併用を行ったところ血圧の不安定性はほぼ消失した。破傷風の自律神経障害は,β受容体遮断薬による危険性が指摘されており,カテコールアミンの分泌抑制を主眼としたコントロールが必要である。硫酸マグネシウムは副腎と交感神経終末からのカテコールアミン放出を抑制し,破傷風治療に対する有効性の報告が海外では散見される。しかし,わが国においてはその認識は高くないのが現状である。α-メチルドパはクロニジンと同じく中枢性α2受容体作動薬でありノルアドレナリンの放出を抑制する。クロニジンの破傷風に対する有効性の報告はこれまでにみられたが,α-メチルドパの使用例はこれまでに報告されていない。クロニジンは副作用のために使用頻度が減少しており入手が容易でなくなってきている。硫酸マグネシウムの大量投与とα-メチルドパの併用は破傷風の自律神経障害に対して有用であると思われ,クロニジン以外の中枢性α2受容体作動薬の有効性についても検討する価値があると思われた。

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