鈍的頸部脳血管損傷とその治療戦略―血管内治療の重要性とその効果の検討―

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  • Blunt cerebrovascular injury and its therapeutic strategy: importance and efficiency of endovascular therapy

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抄録

鈍的脳血管損傷は欧米ではその多くが頸部脳血管に発生し,その頻度は全鈍的外傷の約 1 %前後,また椎骨動脈損傷(VAI)では25%,内頸動脈損傷(CAI)では50%もの高率に二次的脳卒中が発生すると報告されている。一方,頸部脳血管損傷の本邦での報告は少なく,頻度や治療などの点で一定のコンセンサスが得られていない。我々はこうした病態に対して積極的に血管内治療を導入して対処してきたが,今回鈍的頸部脳血管損傷の頻度・危険因子及び治療戦略における血管内治療の意義について検討した。2001年10月~2007年 9 月の期間に搬送された鈍的外傷患者1,405例を対象とし頸部脳血管損傷例につき調査した。その結果13例(0.93%),17血管の頸部脳血管損傷が認められた。損傷血管の内訳はVA I 13,CAI 4,損傷形態ではDenver grade IVが 9,grade IIが 7 で多かった。不安定型頸椎損傷が10例(76.9%)に並存し,また全不安定型頸椎損傷25例のなかで血管損傷を伴ったものが10例(40%)であった。10例11血管に血管内治療及び抗血栓療法を施行し,その他は抗血栓療法のみで治療した。血管内治療群の11血管中, 9 血管は損傷血管のコイル塞栓を, 2 血管は頸動脈ステント留置を施行した。コイル塞栓を行った 9 血管の損傷形態は,grade IV 6 血管,grade II 3 血管であり, 1 症例を除き急性期に頸椎整復固定を要する症例であった。ステント留置の 2 血管は共にgrade IIのCAIで,経過中に進行が疑われた症例であった。治療開始後の脳卒中の発生は認められず,治療効果によると考えられた。鈍的頸部脳血管損傷の治療の第一選択は,一般的には抗血栓療法であるが,不安定型頸椎損傷を合併し,急性期に頸椎整復固定が必要な場合や,全身の出血性合併症で抗血栓療法が施行できない患者に対しては血管内治療が有効な手段となり得ることが示唆された。

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