発生区域による鈍的脳血管損傷分類と治療戦略への応用

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  • A classification for blunt cerebrovascular injury based on the zone of its occurrence: the application to the therapeutic strategy

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抄録

鈍的脳血管損傷(blunt cerebrovascular injury: BCVI)の分類については,放射線学的な形態に基づいたDenver grading scaleがよく知られている。しかしBCVIの病像はその発生部位にも大きく影響を受け,しばしば治療戦略上重要な要素となる。そこで我々はBCVIを発生部位により3つの区域に分類し,各々の特徴と治療戦略につき考察した。2001年10月から2008年9月までに頭頚部放射線学的所見に基づいたスクリーニングによって診断されたBCVI32例36血管を,発生部位別に頸部(zone 1),頭蓋移行部(zone 2),頭蓋内(zone 3)に分類し,それぞれのDenver grade,脳卒中発生率,治療内容,転帰を調査した。zone 1は16例18血管,zone 2は8例9血管,zone 3は8例9血管であった。zone 1では椎骨動脈損傷が72.2%と主体であったのに対し,zone 2,zone 3では内頸動脈系損傷が94%であった。各区域のDenver gradeからみた構成では,zone 1はgrade IIとIVで90%を占めたが,zone 2,zone 3ではgrade Vが約80%を占めていた。脳卒中発生率はzone 1が11%,zone 2が62.5%,zone 3が80%であった。一方死亡率ではzone 1が5.6%,zone 2が50%,zone 3が30%とzone 2が最も高かった。治療内容についてはzone 1の62.5%に対して血管内治療(interventional radiology: IVR)が行われ,zone 2ではIVR 50%,外科手術12.5%,zone 3ではIVR 20%,外科手術40%であった。以上より頸部BCVIではIVRを,頭蓋内BCVIでは積極的な開頭術を中心とした治療が有利であるが,頭蓋移行部BCVIの治療戦略については今後の大きな課題と考えられた。

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