胸部大動脈瘤手術における自己血小板輸血の止血効果

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  • EFFICACY OF AUTOLOGOUS FRESH PLATELET CONCENTRATE HARVESTED BY PLASMAPHERESIS IN THORACIC AORTIC ANEURYSM SURGERY

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抄録

<背景·目的>胸部大動脈瘤に対する大血管置換術では,人工心肺使用時の血液のヘパリン化,および体外循環にともなう血小板数の減少や血小板機能の低下などによって大量出血をきたし,しばしば多量の輸血を必要とする.しかし大動脈瘤患者における出血傾向の原因のひとつとして重要なのは,瘤局所における凝固·線溶系の活性化により凝固異常が起こっているという点である.当院では大動脈瘤の手術において速やかに止血を図るため,手術室で全身麻酔導入後から人工心肺装置作動までの間に血小板アフェレーシスを実施して患者の自己血小板を採取し,人工心肺離脱後に患者に輸血するという治療を行ってきた.今回,その止血効果についてレトロスペクティブな検討を行った.<対象·方法>胸部大動脈瘤の手術を実施する26名の患者に対して,全身麻酔導入後から人工心肺装置作動までの間に,血液成分分離装置を使用して血小板アフェレーシスを実施した.採取した自己血小板15∼20単位は人工心肺離脱後に患者に輸血した.血小板アフェレーシスを実施しなかった過去の34症例と出血量·同種血液製剤の輸血量を比較,検討した.<成績>自己血小板の採取·輸血を実施しなかった症例での出血量は1,322±1,498ml(平均±標準偏差; 以下同様)であり,同種血液製剤の使用量は赤血球製剤12.8±14.2単位,新鮮凍結血漿17.1±20.8単位,濃厚血小板13.5±12.2単位であった.それに対して自己血小板を採取した症例では,出血量が688±493ml,同種血液製剤の使用量は赤血球製剤5.7±7.3単位,新鮮凍結血漿8.5±10.8単位,濃厚血小板2.7±6.5単位と,いずれも劇的に減少していた.<結論>大動脈瘤手術において患者から自己血小板を採取し,人工心肺離脱直後に輸血して止血を図ることは,出血量·輸血量の大幅な減少に寄与すると考えられた.<br>

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