本態性血小板血症を合併した大動脈弁狭窄症の手術経験

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タイトル別名
  • Aortic Valve Replacement in a Patient with Essential Thrombocythemia

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抄録

本態性血小板血症(ET)は慢性骨髄増殖性疾患に属し,血栓形成傾向と易出血性傾向の相反する二面を併せ持つ複雑な病態を有する.本症を合併する症例に対する人工弁置換術の報告はきわめて稀であり,その病態から術中の出血傾向と術後の血栓症が懸念される.今回,ETを合併した大動脈弁狭窄症(AS)に対し,生体弁による大動脈弁置換術を経験した.症例は69歳女性.検診で心雑音を指摘され,近医の心エコー検査でASを指摘された.弁口面積は0.73 cm2,左室-上行大動脈の圧較差113 mmHgのASであり,手術の方針となった.入院時血小板数は70万/µlで,ヒドロキシカルバミドは術直前まで内服し,シロスタゾールは術前3日に中止し,術前2日よりヘパリンを開始した.術中はヘパリンで活性化凝固時間(ACT)を400秒以上に維持し,生体弁を用いて大動脈弁人工弁置換術を施行した.術中易出血性は認めず問題なく手術終了した.術後血小板数は30~40万/µlで推移し,出血も問題なくドレーンは術後2日目で抜去可能であった.また血栓による合併症も認めず,術後13日目に退院となった.ET合併例に対して開心術を施行する場合,周術期の出血と術後の血栓症が問題となり,術前の血小板増多に対する処置と術後の抗血栓療法が重要となる.

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