公共視点と個別視点を統合した農家参加型普及サービスによる農業支援機関と住民との地域協働

書誌事項

タイトル別名
  • Local Activity of Agricultural Support Organizations and Residents According To Extension Service of Farmer -participation-type Integrated both Public and Individual Perspectives
  • コウキョウ シテン ト コベツ シテン オ トウゴウ シタ ノウカ サンカガタ フキュウ サービス ニ ヨル ノウギョウ シエン キカン ト ジュウミン ト ノ チイキキョウドウ

この論文をさがす

抄録

これまで我が国の農業分野では,平等・公平・公正といった理念を踏まえ,国民全体に関わる社会的厚生や個人の効用を高めることを公共性として捉えてきた。そして,農業支援機関は,この公共性に基づいた公共的サービスを提供することを義務付けられてきた。こうした公共的サービスは,実施できない(又は,実施してはならない)領域を生じさせることから,サービスの量と質に限界があり,必ずしも国民の要求に十分に応えてきたとは言い難い。したがって,公共性はその時々の社会情勢や国民からの要求に対応できるよう,その意味合いを変化させなければならないものといえよう。ところでこの「公共」という概念を働きかけとしての「行為」と捉えると,それは一方的なものではなく利害関係者と共に悩み,問題解決にあたる協働過程といえる。つまり「公共」とは,共有化されたものという静態的な側面だけでなく,相互作用といった動態的な意味合いを持つものとしても理解されるべきである。<BR>本稿では,以上の問題意識に基づき,公共視点と個別視点を統合した農家参加型普及サービスにより,地域住民との地域協働を展開し,やがて産地形成に成功した事例を分析する。この事例で農業支援機関が公共性を維持しつつ個別農家を育成し,その地域の産地形成を実現させたプロセスは,(1)公共性を意識した集団指導による農家の産地作り意欲の醸成,(2)農家の階層分化の進行を踏まえた域内格差の是正策の提示,(3)リーダー農家への濃密指導による大規模農家の育成,(4)リーダー農家を中核にした地域活性化のための支援策の強化,(5)地域内における雇用機会の創出と多様な特産品の開発,(6)地域内の連携による6次産業化の促進,である。<BR>この結果から,農業支援機関は,地域住民や地域外の消費者をも巻き込むような重層的な拡がりをもった地域協働方式による支援への転換を図り,その基礎的な公共性を維持しつつも個別性を実現するべきである。

収録刊行物

  • 環境科学会誌

    環境科学会誌 24 (4), 353-362, 2011

    社団法人 環境科学会

参考文献 (15)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ