抗精神病薬による薬剤性口顎ジストニアの1例

DOI
  • 西須 大徳
    慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
  • 落合 駿介
    慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
  • 鳩貝 翔
    慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
  • 佐藤 仁
    慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
  • 臼田 頌
    多摩北部医療センター歯科口腔外科
  • 村岡 渡
    慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室 川崎市立井田病院歯科口腔外科
  • 莇生田 整治
    慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
  • 河奈 裕正
    慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
  • 中川 種昭
    慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室
  • 和嶋 浩一
    慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Drug-induced oromandibular dystonia associated with intake of an antipsychotic drug: A case report

この論文をさがす

抄録

ジストニアは中枢性の持続的筋緊張を特徴とする運動異常疾患である。口顎部に発症した場合,顎のずれや痛みなどの症状を訴えて歯科を受診することがある。今回,薬剤性口顎ジストニアが咬筋・外側翼突筋に発症した症例を経験したので神経学的および薬理学的考察を交えて報告する。患者は20代女性,顎関節脱臼,および顎の痛みを主訴に当院救急に搬送された。CT撮影により右側顎関節脱臼と診断され,プロポフォール鎮静下に整復するも,再度脱臼したとのことで診療要請があった。診察時,顎位は閉口,右方偏位の状態で,救急科初診時とは明らかに所見が異なっていた。咀嚼筋の触診を行ったところ左側咬筋,外側翼突筋の過緊張がみられ,開口困難を生じていた。さらに,開眼失行,眼球上転が認められたことからジストニアを疑い,改めて全身疾患や薬剤の使用について問診した。その結果,統合失調症のため抗精神病薬を2剤内服していることが明らかとなったため,薬剤性口顎ジストニアと診断した。精神・神経科と相談し,治療として抗コリン薬である乳酸ビペリデン5 mgを筋注した。投与5分後には開眼失行,眼球上転,筋過緊張,顎偏位の改善を認め,開口も容易となった。口顎ジストニアは歯科に来院することがあり,その特徴的所見を十分把握したうえで迅速に診断し,他科と連携しながら対応する必要がある。

収録刊行物

詳細情報

問題の指摘

ページトップへ