上肢機能評価・練習装置としての力覚呈示装置の研究

DOI

抄録

【はじめに】近年,バーチャルリアリティ(Virtual Reality;VR,以下VR)技術のリハビリテーションへの応用が進められている.その1つに力覚呈示装置(Haptic device;HD,以下HD)がある.HD とはディスプレイ上の仮想物体に触れたときの感触などを仮想の力覚として呈示する装置のことである.本研究では,現在開発中であるHDシステムを使用して測定した上肢機能の結果を元に,システム評価を行い理学療法への応用について検討した.【開発装置の概要】本システムは,HD,パーソナルコンピュータ,ディスプレイ,および評価・練習用ソフトウェアから構成される.HDは弾性・粘性・摩擦・表面形状の状態などを再現することが可能である.患者がHDの把手を持ち,ディスプレイの表示に従って動かすと,HDがばね力や摩擦などの仮想の力を発生することで,把手の動きに抗する力やアシストする力を付加する.HDの把手部の可動範囲は縦250mm×横400mmで,操作板中心で発生力は30N,位置分解能は0.005mmである.評価用ソフトウェアはデータ収集部と解析部から構成される.収集部ではソフトウェア動作時に,目標位置・カーソル位置・把手にかかる力などを10msecでサンプリングし,保存する.解析部では目標までのカーソル移動時間や誤差などを処理し,これらから操作の円滑さ・応答性・正確性などを評価できる.練習用ソフトウェアには現在WAVE課題など6つのプログラムがある.また,課題や力覚刺激の種類と強度に関しては自由な段階づけが可能である.【対象と方法】対象:本研究に同意の得られた20_から_50代の健常者80名(平均年齢39.9歳,男女各40名).方法:練習プログラム6種類のうちWAVE課題を用いて上肢動作の正確性と動作速度を測定した.WAVE課題はSIN波2周期分を標準波形とし,ディスプレイに表示された波形の軌道を正確になぞるものである.測定条件は,力覚なしで波形を変化させた場合(3条件),標準形状で力覚なし・アシスト(軌道へ引き寄せられる力)・負荷(軌道から押し返される力)の3条件とした.被験者へはできるだけ円滑に速く正確に動かすように教示し,課題遂行時の運動分析も行った.また正確性の指標には軌道からのずれを二乗平均誤差(R.M.S.)として算出した.【結果と考察】WAVE課題の遂行には各関節の協調した運動が必要とされるが,全条件においてR.M.S.と所要時間の間には負の相関が認められた(相関係数は0.8以上).また,SIN波の振幅が大きく周波数が増えるに伴い誤差・所要時間が増加した.以上より,本システムは上肢運動の協調性の評価が行えること,条件設定により課題の難易度の変更が可能であることを実際の運動を通して検証できたと考える.今後,力覚情報と練習効果,各課題特性の明確化,高齢者・障害者への適応,下肢への応用などを検討していく.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539163520
  • NII論文ID
    130004577229
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.558.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ