持ち上げ動作の相違による傍脊柱筋筋電図変化について

DOI
  • 牧野 均
    美唄労災病院 勤労者 腰痛/脊損センター リハビリテーション科
  • 遠山 あづさ
    美唄労災病院 勤労者 腰痛/脊損センター リハビリテーション科
  • 山本 昌明
    美唄労災病院 勤労者 腰痛/脊損センター リハビリテーション科
  • 佐藤 貴一
    美唄労災病院 勤労者 腰痛/脊損センター リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • しゃがみ込み・体幹前屈持ち上げ動作後90秒間の経時的変化

抄録

持ち上げ動作は、腰痛予防の主要な指導のひとつである。また、表面筋電図は、筋活動を簡便に評価する方法である。特に、周波数解析は、筋線維組成や疲労を反映する。<目的>本研究の目的は、持ち上げ動作の相違が傍脊柱筋筋活動に及ぼす影響を筋電図学的に検討し、腰痛症予防に必要な生活指導の一助を得ることである。<対象>対象は、腰痛既往の無い健常男性10名とした。平均年齢24.5歳、身長174.cm、体重68.1kgであった。<方法>筋電計はアニマ社製ホルターMM1100を用い、サンプル周波数を2000Hzとした。信号は、平均積分値(以下AEMG)と平均中心周波数(MPF)を求めた。測定部位は、第1腰椎(L1)、第3腰椎(L3)、第5腰椎(L5)、第2仙椎(S2)の棘突起近傍部とした。測定課題は、体重の50%にあたるコンクリートブロックをしゃがみ込み動作と体幹前屈位動作の2種動作で持ち上げ、持ち上げ動作後立位にて90秒保持し、その間傍脊柱筋の筋電測定とした。測定は日を改めて行い、各々測定後背臥位にて傍脊柱筋に対する最大等尺性収縮を行い、得られた値の%表示で表した。分析は、有意水準5%で、両持ち上げ動作を各々経時的に比較し8192ポイント(4.096秒)毎に対応のあるt-検定を行った。<結果>AEMGは、全く有意な差が無かった。MPFは、L1、L3において有意な差が無かった。しかし、L5では持ち上げ動作終了立位開始後約53秒よりしゃがみ込み持ち上げ動作と比較して体幹前屈位持ち上げ動作のMPFが有意に低下し始めた。また、S2では約16秒後より体幹前屈位持ち上げ動作のMPFが有意に低下し始め、その後測定終了まで継続した。<考察>MPFを用いることによって両持ち上げ動作は、傍脊柱筋下部において有意な相違を見せた。MPFは、筋線維成分と疲労を表すとされ、低下が疲労増加を表すという。今回の研究でも、しゃがみ込み持ち上げ動作と比較し体幹前屈持ち上げ動作の下部傍脊柱筋のMPFが有意に低下した。これは、体幹前屈持ち上げ動作が、L5・S2レベルで著しく筋疲労を生ずる動作になる事を表す。つまり、下部へ行くほど早期に疲労を示した。このような動作が、日常的に持続し継続することにより将来的に腰痛症になる可能性がある。しかし、さまざまな生活・職業がありこのような姿勢動作を避けることができない場合も多いと考える。したがって、腰痛防止の指導として持ち上げ動作の改善と同時にL5・S2レベルでの筋力増強訓練の必要性が必要であると考える。今後検討を加え研究を続けたい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540514560
  • NII論文ID
    130004577301
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.622.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ