電気刺激による末梢循環動態の変化

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抄録

【はじめに】低周波電気刺激の鎮痛効果に対する生理学的機序として,門制御理論や内因性鎮痛機序などが挙げられる。これらの機序は,主に一次痛に対する作用といえる。しかし経験的に多くの患者は,一次痛の慢性化に伴う末梢循環不全が原因の二次痛を訴える。そのため末梢循環の改善は治療目的として不可欠であるが,低周波電気刺激が末梢循環動態に与える影響についての報告は少ない。そこで今回我々は,4種類の異なる低周波電気刺激が末梢循環動態に及ぼす影響を,近赤外線分光装置を用いて検討した。【対象と方法】対象は健常成人7名(男性4名,女性3名)とした。測定肢位は右下肢を台上に乗せた安静仰臥位とし,1分間の安静状態に続き,10分間の電気刺激を右の前脛骨筋(TA)に与え,さらに回復期として10分間の安静をとらせた。その間,TAの末梢循環動態を近赤外線分光装置(島津製作所OM-220)にて計測した。刺激周波数は, 5Hz,25Hz,50Hz,100Hzの4種類を採択し,各周波数ともに通電5秒/休息5秒(1:1)の間歇通電法を用いた。刺激強度は開始時の最大許容範囲で一定とした。測定項目は総ヘモグロビン量(total-Hb),酸素化ヘモグロビン量(oxy-Hb),および脱酸素化ヘモグロビン量(deoxy-Hb)の3項目とした。分析はいずれの測定項目も安静時から回復10分まで,毎分の平均値を算出し,安静時の平均値に対する変化率として表し,各測定項目における4種類の周波数刺激に伴う経時的変化パターンの違いを有意水準5%にて反復測定による二元配置分散分析を用い検討した。【結果】total-Hb,oxy-Hb,deoxy-Hbの全測定項目において,4条件間で経時的変化パターンに有意差を認めた。まずtotal-Hbの経時的変化について,刺激中は5Hzが独自の変化パターンを,25Hz,50Hz,100Hz刺激は類似したパターンを示した。回復期は4条件とも類似した経過パターンを示していた。次にoxy-Hbならびにdeoxy-Hbの経時的変化について,刺激中は5Hzと25Hz刺激,50Hzと100Hz刺激が,それぞれ類似した経過パターンを示した。回復期では50Hzと100Hzは類似した経過パターンを示したが,5Hzと25Hz刺激は相反する経過パターンを示していた。また,3つの測定項目の変化率を比較するとtotal-Hbに比べoxy-Hb,deoxy-Hbの変化率が顕著であった。さらに全般的には,25Hz刺激において最も循環促通効果が認められる結果となっていた。【考察】今回の研究において,選択する刺激周波数により筋の血液動態に違いが生じることが示唆された。また,その誘因としては周波数の違いによる筋収縮様式や筋疲労,そして順応などの違いが考えられた。さらに今回のような局所的な電気刺激での循環促通効果は血液量の増大に比べO2extractionの増加が期待できることなども示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563872384
  • NII論文ID
    130004577325
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.644.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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