介護サービス必要度と入退所の関係

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抄録

【はじめに】 介護老人保健施設(以下、老健とする)では中間施設としての役割の一つに在宅促進がある。在宅促進には介護力、住環境、家族背景の整備などが必要とされ、それぞれが複雑に関係しているといわれる。また、「歩けるようにさえなれば家に帰れる・・・」、「痴呆がひどいから退所はちょっと・・・」、「ADLが自立していないから退所は無理」など、利用者やご家族、時には職員の声も聞かれる。そこで、介護サービスの必要度(各要介護認定等基準時間)と入退所との関係を調査・分析し関連性を検討したので報告する。<BR>【対象および方法】 平成12年4月から平成14年6月までに当園を入所利用された14ヶ月以上入所されている男性3名、女性26名、平均年齢83.69±5.82歳の長期入所者と、自宅に退所された男性9名、女性31名、平均年齢85.28±7.39歳の自宅退所者、医療機関に転院された男性3名、女性25名、平均年齢83.04±8.57歳の病院退所者の計97名を対象とした。そこで全97名を対象に各要介護認定等基準時間ごとにK-Means法を用い統計的に基準時間が長いケースと短いケースの2群に大別し、2群を更に長期入所群、自宅退所群、病院転所群の3群に分類し、各要介護認定等基準項目ごとに二元配置分散分析を用いて両群の関係を調査・分析した。<BR>【結果】 直接生活介助:長期入所_-_病院転所、自宅退所_-_病院転所間において長期入所、自宅退所の方が病院転所に比べ有意に介助時間が短かった。(p=0.0028、p=0.001) 間接生活介助:長期入所_-_自宅退所、長期入所_-_病院転所、自宅退所_-_病院転所間において自宅退所、長期入所、病院転所の順に介助時間が有意に短かった。(p=0.0059、p=0.0277、p=0.0000) 問題行動関連介助:有意差を認めなかった。 機能訓練関連行為:有意差を認めなかった。 医療関連行為:有意差を認めなかった。<BR>【考察】 今回の結果により老健からの自宅退所には直接生活介助時間の短縮よりも間接生活介助時間を短縮する必要があることが示唆された。これは、機能訓練関連行為時間に有意差がなかったことからも生活関連動作が在宅復帰に大きく関与していると考えられ、今後の老健でのリハビリテーションのあり方を示唆するものと考える。また、問題行動関連介助時間と在宅復帰に有意差が認められなかったのは要介護認定等基準時間の問題行動関連介助時間の値が小さく統計的に時間が長いケースと短いケースに分類する際偏りが出たことが原因と思われる。このため、今回の結果からは両群の関係は明確にはできなかったが今後さまざまな要素との関係を明確にし在宅復帰に積極的に取組みたいと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539961216
  • NII論文ID
    130004577350
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.667.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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