Leuprorelin acetate投与にあわせ、理学療法を実施した球脊髄性筋萎縮症の一症例

DOI
  • 天尾 理恵
    東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 辻 省次
    東京大学医学部附属病院神経内科
  • 山本 知孝
    東京大学医学部附属病院神経内科
  • 三宅 直之
    東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 江藤 文夫
    東京大学大学院医学系研究科リハビリテーション医学分野
  • 横田 一彦
    東京大学医学部附属病院リハビリテーション部

書誌事項

タイトル別名
  • 投与初期の筋力変化と発症初期の理学療法プログラムの検討

抄録

【はじめに】球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は伴性劣勢遺伝形式を示す緩徐進行性の運動ニューロン疾患である。発症は30~50歳代の男性に多く、性腺機能異常、顔面筋・舌筋・四肢近位筋優位の萎縮と筋力低下、筋攣縮を特徴とする。本症の根本的治療は確立しておらず、近年、モデルマウスで血中テストステロン(TST)濃度低下による症状の進行抑制が報告された。今回、TST産生能低下効果を示すLeuprorelin acetate(リュープリン)投与治療目的に入院となったSBMA患者の投与初期の筋力変化と、発症初期の理学療法プログラムの検討、及び今後の課題についてまとめる。<BR>【症例】58歳、男性。20年以上前より頬・手の震え、構音障害を指摘され、'00より勃起不全、'01より立ちしゃがみ・歩行・階段昇降での疲労を認め、移動に時間を要するようになった。'02.6月に他院の遺伝子診断でSBMAと診断を受け、当院でのリュープリン投与による自主臨床試験(院内委員会で承認)を紹介され、'03.7/11治療目的に入院となった。<BR>【投薬治療と評価】治療はリュ-プリン1ヶ月製剤を毎月1回皮下投与にて3ヶ月間使用し、以降3ヶ月製剤に切り替えて行われた。リュ-プリン投与前(2回)、投与2・4・8週後、以降投与にあわせて筋力などを評価した。<BR>【経過】入院時ADLは自立しており、筋力低下は軽度(MMT4~5-)であったが階段は手すり使用、床からの立ちしゃがみは不可で、予後への不安が多く聞かれた。2ヶ月の入院期間中、投薬効果評価の為、1日6千歩前後の歩行に留め、退院1週間前より歩行に加え、基本動作訓練(起立・スクワット・段差昇降)、床上での股・膝関節運動を開始した。退院後は電話で状態を確認の上、過負荷に注意し運動量を調節した。リュープリン投与前後で筋力に著明な変化は認めていないが、自己訓練開始後、運動量は漸増し、電気サーボ制御式エルゴメータで測定した下肢伸展筋力が向上傾向にあり、床からの立ちしゃがみが可能となった。<BR>【結果と考察】SBMAは、10~20年の経過で緩徐に筋力低下進行し、歩行不能となるとされている。今回、PT介入後、筋力に著変はなく入院前のADLは維持できていることから、本症例のようなADL自立レベルの初期筋力低下のSBMA患者では、早期にPTが介入し、近位筋を中心とした床上運動、また、協調的な基本動作訓練で立位・歩行に必要とされる下肢伸展筋力維持を狙い、安全性・負荷を考慮したプログラムを実施することで、進行の緩徐化、筋力・活動性低下に伴う廃用の改善、運動実施による精神的安定の効果を得られるのではないかと考えられる。リュ-プリン治療開始後、TSTは去勢レベルを維持しており、今後、投薬効果を長期的に観察するとともに、PT継続による筋力・ADL能力の推移、プログラムの有効性を評価していくことが課題である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), A0095-A0095, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541735552
  • NII論文ID
    130004577624
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0095.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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