アジュバント関節炎ラットの廃用性筋萎縮の進行ならびに関節炎に対する冷刺激の影響

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抄録

【目的】慢性関節リウマチ(以下、RA)の関節痛が激しいケースでは、筋力トレーニングなどの効果が得られにくい場合がしばしばである。一方、冷刺激はRAの関節炎の消炎・鎮痛を目的に適応されることが多いが、我々の先行研究において冷刺激は廃用性筋萎縮の進行抑制にも効果が期待されることが明らかとなった。つまり、RAでもこの効果が期待できれば、筋力トレーニングの一手段として応用可能と思われる。そこで今回我々は、RAの実験モデルであるアジュバント関節炎ラットの後肢に対して冷刺激を負荷し、炎症、関節炎におよぼす影響と廃用性筋萎縮の進行抑制効果を検討した。<BR>【材料と方法】7週齢のLewis系雌ラット16匹を対照群(以下、C群)5匹、アジュバント関節炎群(以下、A群)6匹、アジュバント関節炎に冷刺激を負荷する群(以下、A+Cold群)5匹に振り分け、A群、A+Cold 群には起炎剤であるフロイント完全アジュバントを投与し、関節炎を惹起させた。また、A+Cold 群には起炎剤投与7日目から2週間にわたって1日1時間、週5回、麻酔下で後肢全体に10°Cの冷水浴を実施した。そして起炎剤投与3週後、麻酔下で血液、両側のヒラメ筋、長趾伸筋、足関節を採取し、血沈速度、血清シアル酸値、血清乳酸脱水素酵素(以下、LDH)値、筋線維直径、足関節の関節炎の程度について検討した。<BR>【結果】1)血沈速度・血清シアル酸値: A群、A+Cold 群の2群間で比較すると、両指標ともA+Cold 群の方が有意に低値を示した。2)LDH値:C群、A群に比べ、A+Cold 群は有意に高値を示した。3) 平均筋線維直径:C群と比べ、A群とA+Cold 群のヒラメ筋、長趾伸筋の全ての筋線維タイプは有意に小さかった。また、A群とA+Cold 群の2群間で比較すると、ヒラメ筋のタイプ1線維、長趾伸筋のタイプ1・2A・2B線維はA+Cold 群の方が有意に大きかった。4)足関節組織像:A群、A+Cold群では典型的な関節炎像が認められ、その程度は2群とも変わらなかった。<BR>【考察】今回の結果、アジュバント関節炎ラットの後肢に冷刺激を負荷すると、関節炎の病態進行を助長することなく、廃用性筋萎縮の進行抑制効果が認められた。また、血沈速度、血清シアル酸値の結果を考慮すると、冷刺激による消炎効果も同時に期待できる。一方、A+Cold 群のLDH値は他群より高値を示したが、LDHは解糖系のエネルギー生産過程で必要となる酵素であり、運動後に上昇することがよく知られている。したがって、A+Cold 群では、冷刺激が何らかの形で骨格筋に対するストレスとなり、運動負荷の場合と類似した状況が再現され、その結果として廃用性筋萎縮の進行抑制効果が得られたのではないかと推測される。その詳細については、今後さらに検討を加えていきたい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), A0937-A0937, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541113728
  • NII論文ID
    130004577816
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0937.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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