足底挿板装着による変形性膝関節症患者の臨床症状と歩行様態の変化

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抄録

【はじめに】変形性膝関節症に対する理学療法において,足底挿板療法により症状が寛解することを多く経験する。そのような場合に,主訴のみならず理学所見がどのように変化し,それと共に症状を訴えることの多い歩行の様態がどのように変化しているかというデータを定量的に示した報告は少ない。本報告では,保存療法における一つのモダリティとして足底挿板療法を実施した変形性膝関節症患者2例を呈示し、急性的効果を検討するために自覚症状,理学所見と共に歩行動作を分析した結果を示す。 <BR>【症例紹介】1)症例2:66歳,男性,診断名は両変形性膝関節症,および左膝内側半月板損傷であった。平成13年10月,右膝に症状が出現,さらに平成14年2月,左膝にも症状が出現した。平成15年2月に両足に外側ウェッジが処方されて以降,痛みは寛解した。その後の主訴は歩行量が増加したときの左膝の違和感と日常生活で正座ができないことである。2)症例2:62歳,女性,診断名は両変形性膝関節症であった。平成10年に3度目の右膝骨切り術を行った後に症状が悪化した。主訴は右膝の締め付けられるような痛みと左膝の軽度の痛みであった。当院受診後の平成15年5月に内側縦足弓と外側縦足弓などを保持する足底挿板を着用したところ,自覚的な歩行の困難さが軽減した。<BR>【歩行分析】歩行中の表面筋電図(EMG)とビデオ撮影による運動学的分析を行った。EMGは大腿直筋(RF)、内側広筋(VM)、外側広筋(LM)、内側ハムストリングス(MH)、外側ハムストリングス(LH)、腓腹筋内側頭(MG)、腓腹筋外側頭(LG)の下肢7筋から記録した。運動学的分析は各下肢関節角度変化などを計測した。各試技を5回反復し,症例内で二元配置分散分析(足底挿板の有無×左右)により統計学的に分析した。<BR>【結果】1)症例1:EMGの最大値はVL,RF,LH,MG,LGについて足底挿板の有無に関わらず左右差があった。EMG最大値の出現時期は各筋とも有意差はなかった。1歩行周期の時間は,外側ウェッジを装着すると有意に短くなった。しかし,立脚相時間や立脚相の1歩行周期に対する割合に有意差はなかった。2)症例2:EMGの最大値は,VLとRF以外の筋において足底挿板の有無に関わらず左右差が見られた。また,各筋の比はVM/VLとMG/LGで,足底挿板の有無に関わらず左右差があった。また,VM/VLには交互作用があった。EMG最大値の出現時期は,全ての筋で足底挿板の有無に関わらず左右差があり,すべて右が左よりも遅れていた。歩行周期は有意差がなかった。<BR>【考察とまとめ】症例1,症例2ともに足底挿板の装着によって臨床症状が改善した。今回実施した計測方法では検出できない範疇で歩行動作が変化して症状が改善している可能性があるものと推察する。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), C0878-C0878, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205562749056
  • NII論文ID
    130004578210
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.c0878.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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