正常歩行における足部と下腿の関係 第一報

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タイトル別名
  • 立脚後期における足部、下腿の回旋に着目して

抄録

【目的】<BR>歩行立脚後期における課題は、下腿と身体全質量の前方移動を制動することであり、重要となるのは足部の安定と下腿三頭筋の筋力を足先まで効率的に波及させることである。これまでに矢状面上で足部と下腿それぞれの関節角度の関係を観察した報告はみられるが、足部の詳細な運動と下腿の運動とを関連付けて検討した報告は少ない。<BR>そこで、Williams(2003)らの方法を改変し足部、下腿を5分割モデルとし、正常歩行における足部と下腿それぞれの回旋角度の関係を検討することを目的とした。<BR><BR>【方法】<BR>対象は健常者8名(男性4名、女性4名、平均年齢23.7歳)とした。被験者の第一趾爪、第一趾基節骨底、第三趾基節骨底、第五趾爪、第五趾基節骨底、舟状骨、立方骨、第三中足骨、踵骨隆起、腓骨筋滑車、内果、外果、膝関節内側裂隙中央及び外側裂隙中央の計14点に標点を貼付し、至適歩行を三次元動作解析システムVICON612(Vicon Motion Systems社製)で計測した。<BR>得られた計測値より足部剛性に影響を及ぼすと考えられる各体節間の軸回旋角度を算出した。算出した角度の詳細は以下の通りである。内側MTP関節と中足部のなす角度(以下、MM角度)、外側前足部と中足部のなす角度(以下、LM角度)、中足部と後足部のなす角度(以下、MH角度)、中足部と下腿がなす角度(以下、MC角度)、ならびに空間上での下腿回旋角度とした。歩行1周期中で最も足関節の剛性が要求される立脚後期に着目し、これらのデータをもとにそれぞれの角度の関係を分析した。<BR><BR>【結果】<BR>計測データからMM角度、LM角度、MH角度、MC角度は被験者間で2種類のタイプが存在した。<BR>MTP関節優位型(以下、MTP群)では、MM角度が回外、LM角度が回内、空間上での下腿回旋角度が外旋する一方でMC角度に大きな変化は認めない傾向を示した。また、MH角度は外反位からわずかに内反する傾向が認められた。<BR>中足部回旋優位型(以下、MC群)では、MM角度、LM角度に大きな変化は認められず、逆に空間上での下腿回旋角度の外旋角度が大きくなるとともにMC角度は外旋角度が大きくなる傾向を示した。また、MH角度は一定の変化は認めなかった。<BR>群間の相違として、MTP群は男性が多くMC群は女性が多い傾向を示した。<BR><BR>【考察】<BR>今回の研究から、歩行立脚後期においてMTP関節回旋優位型と中足部回旋優位型の異なる2種類のパターンを認めた。諸家の報告では、立脚後期、後足部と前足部の回旋が相反することで足部の剛性は高まり下腿三頭筋の筋力は足先に波及するとしている。MTP群は後足部が内反しMTP関節においても回旋が認められ、足部の剛性を高める傾向がみられた。MC群では後足部の内反、MTP関節の回旋は認められない特徴を示した。よってMC群は足部剛性不十分を中足部と下腿間の過度の外旋を用いて代償している可能性が示唆される。今後、男女間における相違及び力学的観点から解釈を進める必要があると考えている。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0843-A0843, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539169664
  • NII論文ID
    130004578921
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.a0843.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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