重り負荷における脳内機構

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抄録

【はじめに】失調症状を呈する患者へのリハビリテーションに、以前より重り負荷が用いられてきた。しかしこの治療法の効果における脳内でのメカニズムについては、不明な点が多い。そこで今回、健常人に対して重り負荷を用いた足関節運動を行い、この重り負荷が脳内でどのような影響を及ぼすかを機能的MRI(以下fMRIと略す)にて測定し検討した。<BR>【対象】対象は健常成人7名(19歳~45歳。平均30歳。男性6名)。すべての対象者にインフォームドコンセントを行い了解を得た。撮影は同大学の放射線科教員が行い、脳外科医師の立ちあいのもと実験を施行した。<BR>【方法】課題は足関節の底背屈運動である。1秒間に1回足関節底背屈運動を負荷無しで行う場合(以下対照運動)と、1kgの重りをつけて行う場合(以下負荷運動)に分けた。この課題を左右それぞれ40秒間、2回行った。各施行間には40秒の安静をとった。対照運動と負荷運動は、被験者によりランダムに設定した。fMRIはGE社製1.5T臨床用MR装置(Signa Horizon)を使用した。測定データは、PCに転送しSPM99にて行った。位置補正、標準化、平滑化(FWHM:10mm)の後、7名のデータを重ね合わせ、有意水準0.01にて解析を行った。<BR>【結果】右対照運動においては、左感覚運動野、左右の補足運動野、左Brodmann area 40(以下BA40)、小脳の賦活を認めた。右負荷運動においては右対照運動に比べ、左BA40の賦活の増大と、更に右BA40の賦活も認めた。自動運動での運動野の信号強度は10.91、小脳は5.71であったが、負荷運動では運動野11.65、小脳5.79であった。左対照運動においては右感覚運動野、左右の補足運動野、小脳の賦活を認めた。左負荷運動では左対照運動と比較して、同領域の賦活の増大を認め、更に左右BA40の賦活を認めた。自動運動での運動野の信号強度は14.90、小脳は8.13であったが、負荷運動では運動野16.82、小脳9.76であった。<BR>【考察】感覚運動野、補足運動野、小脳領域の賦活は右負荷運動時の増大はわずかであったが、左負荷運動時では賦活増大を認めた。また負荷運動においてBA40の賦活が示された。BA40は異なる感覚の収束や感覚と運動の統合の役割を担っているといわれている。<BR>負荷運動により末梢からの感覚入力が増大し、そのために感覚の高次機能である両側BA40の賦活に至ったと思われる。またこのBA40の賦活と運動野、補足運動野、小脳の賦活の増大が、重り負荷における失調症状の軽減に寄与していると考えられる。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0874-A0874, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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