脊髄性進行性筋萎縮症患者の異なる病期における在宅復帰への取り組み

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抄録

【目的】成人発症の脊髄性進行性筋萎縮症(以下SPMA)は、脊髄前角の運動神経細胞の変性により全身の筋萎縮が進行性に悪化する疾患であり、下位運動ニューロン徴候のみを示す筋萎縮性側索硬化症の亜型である。今回呼吸筋麻痺を起因とする呼吸不全により入退院を繰り返した症例を経験した。異なる病期を通して在宅復帰への取り組みを行い、現在まで順調に在宅生活を継続している。症例およびご家族の了承を得て、若干の考察を加え報告する。<BR><BR>【症例】47歳、女性。平成6年歩行障害で発症。平成10年SPMAと診断。夫、義父母と同居。主介護者は夫。家事は義父母が行っていた。<BR><BR>【病期1】平成16年4月気道感染により当院入院。%VC22.3と低下を認め、夜間のみNIPPV導入を開始。ALS機能評価尺度40点満点中22点。入院前伝い歩き可能でセルフケア自立レベルであったが、ベッド上起居動作は電動ベッドを使用し可能だが、立ち上がり、歩行が不可能となった。在宅復帰へ向けて、排泄と入浴は自宅トイレと浴室を可能な限り使用したいとの本人の希望を受けて、車椅子移動が可能となるように段差解消を主に改修を行った。両肩に疼痛があり、移乗は全介助のためトランスファーボードを用い本人介助者双方の負担軽減を図った。日中トイレでの排泄介助はシャワーキャリーに乗車したまま便器への移乗を介さずに行い、夜間は尿器使用とした。入浴はシャワーキャリーを用い2人介助で行うことにした。退院前に夫と訪問看護、介護スタッフに介助方法の指導を行ない、11月自宅復帰した。<BR><BR>【病期2】約1週間後呼吸不全にて当院再入院。気管切開施行。以後夜間のみTPPV管理となり、日中は人工鼻で過ごすが日に1,2回の吸痰が必要となった。四肢筋力低下も進行し、自力での体位変換が困難で、端坐位の耐久性も低下した。ALS機能評価尺度15点。入浴は訪問入浴車利用に変更し、スピーチカニューレを使用しない時のコミュニケーション手段は電気喉頭器を用いる事にした。呼吸管理は自己吸痰が可能となり、人工呼吸器の取り扱いは夫が行うことになった。在宅復帰には専門医の訪問診察と定期的な気切カニューレ交換が必要となったが、当院からでは遠方で対応が難しいため、近隣の訪問診察を受け待つ病院間と連携を図り、初めの取り組みとして在宅医療の拠点病院への1週間の準備入院を経て、平成17年6月自宅復帰した。<BR><BR>【考察】進行性疾患の場合常に障害の進行をみこした対応が重要であり、予想される問題にどのような支援が可能かについて事前に情報提供を行なうことが、在宅療養の不安を軽減し精神的サポートに繫がると考える。地域の難病患者の居宅生活支援策が進められている現在、今回の取り組みはその第一歩として位置づけられるが、移送サービスの不足、急変時の対応やレスパイト入院の受け入れ等は今後の課題である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), E1008-E1008, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205562875520
  • NII論文ID
    130004579539
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.e1008.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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